ノルマンディではあちこちでリネンの原料 フラックスが満開になりました。
広大な土地がどこまでも優しい青に染まる様子は、何度目にしても本当に見事です。
いつまでもずっと見ていたいところですが、花は開いて半日で散ってしまうので、
この景色が見られるのも6月中旬〜下旬の午前中だけです。

▲美しい青紫色。畑によってはもう少し白っぽい青のところもありました


1mほどすーっと真っ直ぐ伸びた茎に、太陽に向かって開いた小さな花。
風が吹く度に揺れるその細い体は丈夫な繊維でできており、素手では到底ちぎれません。
フラックスは一時の儚さと強さを兼ね備えた植物なのです。

▲花は直径1.5cmくらい。花弁は透けるほど薄い

 
この日は、繊維を取り出す作業をする工場も訪れました。
そちらで働く方から、1ヘクタールの畑から収穫したフラックスで
何がどのくらい作られるか教えていただきました。

▲畑でロール状にまとめて回収します。荷台にはこれから作業をするフラックスが積まれていました


一例になりますが 取り出した繊維から、
・500枚のスカート
・200枚のワンピース
・50枚のシーツ
・200枚のテーブルクロス
・300㎡の壁布
・225枚の郵便物を入れるズタ袋
そして繊維を出す際に落ちた屑から、
・370㎡の羽目板

種からは、
・150リットルのリネンオイル
・700kgの家畜の餌
以上が採れるそうです。
私には単位が大きすぎてこれが多いか少ないか想像しづらかったのですが、
1年に1度しか収穫できず、しかも同じ畑は続けて使用せずに輪作をし、
ほとんど農薬を使わずに育てる手間を考えると大変なことです。

洋服を作るとき、こういうことも心に留めておこうと思います。

▲工場で飼育されている羊。フラックスを餌にしているのは主に牛で、この子達は食べないのだそう

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ENYO ソリアノ綾佳