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■穏やかに広がる言葉、布
「織り機に座り、布を織る
淡々と手を動かしていると
ざわつく心も静まり、静められる
自分は“静かな空気”に
魅了されていて
それを作品にのせて
使い手へと届けたい
そう考えています」

二子玉川shedでの個展にむけて、手織り作家の山口ミスズさんから届いた文章。淡々とした少ない言葉から、どこまでも広がる穏やかな海が目の前に浮かぶよう。
この文章だけでも十分、山口さんそのものが表れているのですが、お会いしたときに伺ったお話をすこしだけさせてください。
■ ひとりの世界で織る
手織りに出合うまでの10年間、福祉の仕事をしていた山口さん。繊細な考え方をもつ人々と対話し、何を思っているのか、自分は何を思ったか、それをどうやって言葉にしよう…と、人のことをずっと考える日々でした。

人に向き合う仕事にすこし疲れを感じていたころ、今度は人ではなく物に向き合ってみたい、とはじめたのが手織り。今までとちがう穏やかな、自分だけの世界が広がりました。

「同じことを反復していくのを、やりたかったんだと思います」
子供が遊んでいる公園が見えるいつもの部屋で、同じ色の糸を見ながら同じ動作を繰り返す。飽きることなく、それが暮らしの一部になっていました。

■ストールだけを、毎日少しずつ
はじめた頃は、染めたり紡いだり、コースターやバッグなどさまざまな作品をつくっていたけれど、 育児や震災をきっかけに「時間には限りがある」と意識するように。

「子育てをしながら、わずかな人生の中で時間を割いてまでつくりたいもの。本当に使いたいものはなんだろう、と真剣に考えるようになりました 」

山口さんにとって「織る」ことは、自分と向き合うこと。お坊さんが写経をするように、心が鎮まり静けさを感じられる時間です。
子供がいる“動”の世界に対して、“静”を、 限りある自分ひとりの時間に求めていたことに気づきます。

「手織りはひとつ仕上げるのにも時間がかかります。 あれもこれもと欲張らず、ただ『つづける』ことだけは欲張ろう、と決めました。」

静かな時間の中に色や形は必要ない、と、モノトーンカラーを同じ幅で「織りつづける」ことに。
少しでもいいから毎日織るようにこころがけ、ストールだけをつくる、という今の作風に落ち着きました。


■大きな流れの一部に私がいる感覚で
ウール、アルパカ、カシミヤ…素材そのものの質感を感じることができる糸で、丁寧に織られた山口さんのストール。それはまるで「育てる布」。使って、洗って、を繰り返すうちに、織り目が詰まり、一枚の布のように変化していきます。

手織り作家「山口ミスズ」と、本名で活動をはじめたのは最近のこと。言葉自体にイメージを持たせてしまうからと、ブランド名はありません。

「 制作に関しては『布を見てもらえたらそれでいい』と思っていて、 ストールにはタグもつけていません。
オーストラリアに羊がいて、輸入する人、紡ぐ人がいて…その糸で私が織った布を、お店で手に取り、使ってくれる人がいる。この長い流れの一部に私がいる感覚。でも、そこには確実に私のオリジナリティーがあります。」

shedでの個展では、山口さんのつくるモノトーンカラーのストールが、グラデーションになって広がります。
1本の細い糸からつくる大きな布が、風をまといながら、 shedという小屋の中で静かな時を過ごします。

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