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■古いものをお手本のようにして
神戸、西元町駅から徒歩2分。アーケード内の一角に残された、淡いレンガ色の歴史を刻んだ建築。
近代化産業遺産として認定されるそのビルの4階に、Atelier elのアトリエ兼ショールームはあります。




すりガラスのはいったドアを開けると、アーチ型の格子窓を光源にした静謐な空気が一面に。



室内にはアンティークの調度品やサンゴの化石、自然の枝を使用したディスプレイとともにジュエリーが置かれています。

「古い物を綺麗だと感じるのは、朽ちて変わっていくということが自然の力によるものだからだと思います」と、話すのは岡本英之さん。続けてこんなふうに説明します。

「好きな古物や自然のものと、自分達がつくったものを一緒にディスプレイとして並べるのは、その魅力に埋もれてしまわないか確認する作業です。
しっかりと自分のものがよく見えたときはうれしい。朽ちていくものに勝ればいいなと思いながら、見劣りしていないのか見比べています」




「あたらしいものをつくったときに古物や自然の魅力を上回る様なものをつくりたい。志の部分です。
自分だけじゃなく、妻もデザインしていますし、みんなで手を動かしてつくっています。そういうところをみんなでめざしているというのがひとつあります」




■眺めていて心地いいかたちを
Atelier elを立ち上げたのは、2010年の1月。もともと英之さんと匡香さんは、同じアパレル会社の彫金部門で働いていたそう。
「妻の実家が宝飾店を営んでいたので、そのつながりの職人さんに技術を教えて頂ける環境もありがたかったです」

「妻とはお互いデザインしたものをふたりのフィルターに通して、毎回意見交換をします。それによってふたりともがいいと思ったのが、品物として残ります。
つくるときは、アクセサリーをつくると捉えているというよりも、見ていて心地いいかたち、面白いかたち、もっとよく見てみたい、というなものをめざしています。
それをお客さまがアクセサリーとしてお選び頂き、身につけてくださる、そんな感覚です」

■日常の中に生まれてくる瞬間をみつけて
時間がもたらす自然な状態への揺るがないあこがれ。山、海、川、植物…… 自然に触れたときの時間。Atelier elの制作のモチーフにつながるのは、自然のなかにいるときが多いそう。

「子どもの頃は野山でよく遊んでいたので、山に行ったり海の中に入ったり、自然に触れることが多かったです」



「源流でイワナを釣るのが趣味なんですけど、そういう日は早朝に湖の周辺をまわるように車で上がっていく。そうしていると、湖面がきらきらしてきれいなんです。額縁で抜き取ったらすてきだな、と、日常の一部からモチーフは生まれていきます。
実際にホワイトゴールドの荒した水面にダイヤをいくつか散りばめる様に留めて、それを金の細い枠で囲ったシリーズもあります」
■ことばにできない感覚
岡本さんの話を聞いていて感じるのは、シンプルに素直な状態から生まれるものの尊さ。その自然で真っすぐな気持ちは、つくることへの姿勢にもつながっているような気がしました。


「デザインは妻とふたりでしています。もうひとり、勝という職人がいて、その3人がメンバーで日々ものづくりをしています。
リング一つとっても削り方、金槌の叩き方、石の留め方など、言葉では言い表わせないそういう細かなバランスがある。それを共有してものづくりをしています」


「自然でいうと木の生え方や木立の並び方とか、木の枝の生え方ってルールがないようで実はあるんですよね。こう生えているから、次こういうふうに芽が出て、と。
人にはあまりわかりにくいけど、ルールがあってそれに癒されるような気がします。
デザインの難しい判断に迫られた時、そのような自分達のルールを落とし込んでつくっています」

カテゴリ:つくり手ファイル
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