アルミのちりとりを制作した工場、向出製作所は新しく開発された街並みを抜けた小さな山の上にありました。
春には筍が収穫でき、もう少ししたらオニヤンマが飛び交うという気持ちのいい場所でした。





こちらでもトレイは完成していて、あとはハンドルをつける工程を残すのみ。
安達家具から届いたばかりのハンドルを向出製作所の職人さんが早速装着、それはまるでリレーのランナーが託されたバトンを受け取る姿のようにも見えました。
そう、木製ハンドルは向出製作所がつくるアルミ製トレイのためのもの。
逆に、ここ向出製作所でつくられたアルミのハンドルというのもあって、こちらは安達家具がつくった木製のトレイにつけられるのです。





主に制御盤制作が多いという向出製作所ですが、最近では店舗のための家具や小物なども手掛けていて、KOHOROとの出会いも鎌倉にある店の什器がきっかけ。
新しいものなのに、歴史を感じさせる存在感に惹きつけられたのです。
作者である大橋直人さんは、そんな出会いを「うれしい」と言います。
「依頼されたことに忠実につくれるのは、当たり前。そこに自分たちの考えも提案していければ…」





アルミのちりとりは、素材の特徴である「軽さ」が生きるようにつくられています。
そのために厚みは最小限に。当初は2mmでつくられていたものの、それでは重いということで1.5mmになったのだとか。ちなみに1mmまで薄くしてしまうと、取っ手ががたつく恐れが出てきてしまい、全てがバランスよく落ち着くのが、1.5mmという厚さだったのだそうです。

そしてその厚さをそれ以上にしないよう、「いかに火を使わずに形にするかもテーマだった」と、大橋さん。つまり溶接をしてしまうと内面部にビード(帯状の盛り上がり)が出て厚みが増すだけでなく、その外観は大橋さんにとって「美しくないもの」だったのです。

もう一つのアルミの特徴は、経年変化していくこと。 大橋さんもKOHOROも、これを魅力だととらえました。 「傷がつきやすく、汚れが目立ちやすいのは確かにデメリットです。 でも個人的には、リモアのスーツケースのように使うほどに味が出るところがいいと思います」 デメリットの解決となりそのよさも生かすため、手垢などの汚れがつきにくいよう内面部にだけクリアーコート材を塗布し、表面処理はあえて細かい目が出るよう、キズをつけた仕上げが施されました。 こうしてきれいに年を重ねるトレイの完成です。





KOHOROと二人の作り手。
その誰もが欠けても、二つのちりとりは存在しなかったことでしょう。
美意識の宿ったちりとりは、使うことによってより美しい表情を見せてくれるはずです。


KOHOROのちりとりは、ENVELOPE ONLINE SHOPでもお取り扱いしています。