ものづくりを訪ねて
kohoroのちりとり〜二人のつくり手からの回答〜


ハードすぎず、ソフトすぎない革の質感。
男性、女性どちらが所有していても違和感がないデザイン。
プロダクトより人の温もりがあり、手づくりのモノより人の気配を感じさせないANDADURAの革小物は、全てにおいて「ちょうどいい」のが持ち味。
神奈川県にある工房で、つくり手である山本祐介さんにお話をうかがいました。


革の表情を追求

ANDADURAの製品に使われているのは、日本でなめされた革。 革といえばイタリアなのでは?という素朴な疑問に、「確かにイタリアの革は質が高いけれど、なかなか細かいところまでは指示が出せなくて。 色々な要望をきいてくれる日本のタンナーさんにお願いしているんです」と山本さん。素材の表情を大切にする山本さんにとって、どうやら気心の知れた皮革職人というパートナーの存在は不可欠なよう。
ところどころに自然なシボが入り、しっかりとしたフォルムを成しつつ、柔らかさも合わせもつANDADURAの革は、職人と山本さんの対話による産物なのです。


植物の渋でなめされているANDADURAの革。表面の凹凸、シュリンクは自然なシワが出る、ドラム缶のような機械に入れてぐるぐるとまわす加工法を採用。革の重みでナチュラルな仕上がりに。

(上)乾燥を防ぐため定期的にミンクオイルや蜜蝋などで保湿を。 天然皮革は手をかけてあげることで、いい味に育つ。
(下)カラーは黒に近いネイビー、ブラウン、キャメルの3色。

キャメル色のミニサイフ。手前は山本さんが数ヵ月使ったもの。 「ヘビーに使っていたので結構変化していますね。ジーンズのポケットに入れることが多かったから、藍色がうつっているかもしれません」使っていくうちに、革の色は濃く風合いを増し、使い手の個性が表れる。






全ては手作業で

アイテム別に用意されている型紙。革にあててカットしていきます。
カットしやすい高さにつくられた台も、ご自身によるもの。




カーブをしている箇所は、この道具を使ってカット。
既製のものに求めているサイズがなかったことから、特注したのだそう。



金槌でトントンと叩いて、ロゴを刻印。



裁断面は、革の色に近い染料を塗って滑らかに。その後磨きをかけて美しく仕上げます。




縫う前に、ちょっとレトロな雰囲気の革漉き機の出番です。
合わさった部分をきれいに見せるため革の厚みを調整。



テープで仮留めをしてから、アームミシンで縫製。







快適さを約束するカタチ

トレーペンケース

お盆のかたちから逆算してつくられたペンケース
ファスナーを開くと、本体がトレイ状に広がり瞬時にペンが取り出せます。
きゅっと上がったサイドの形状がチャーミング。




ファスナー長財布 開閉口が広く、中身がわかりやすいL字ファスナーの財布。 ズボンのポケットに財布を入れる人に嬉しい大きさです。 仕切りが一つなのでスマートに携帯可能。




ファスナー長財布

同じく使い勝手のいいL字ファスナーの長財布
収納力があり、たくさん入れてもスリム。
真ん中の仕切りに小銭を、仕切りの左右に、お札、領収書などを整理できます。ファスナーを開けるワンアクションがないので、スムーズに支払いができるのです。





歩くようにモノをつくる

山本さんは以前店舗の設計をしていました。
図面にむかい頭で考えていた以前と比べ、今は自身の手を動かしながらのモノづくり。
革の加工からパッケージまでトータルで見届けるのも、前の仕事とは違うところ。
ずいぶん世界が変わったようですが…
「(今の仕事は)性に合っているようです。ずっと自分の身体を使いたいと思っていたから。」
「数年前益子の参考館を訪れたのですが、参考館は人の手の入り方と自然との調和がよく、そこに身をおいた時にとても気持ちがよくて…。頭で考えてつくったのではないと感じました。 自分も身体を使ったモノづくりをしたいと思ったんです。」



ANDADURAは、スペイン語で「歩くこと」を意味します。
名づけの理由をたずねると、こんな言葉が返ってきました。
「僕、歩きながものを考えるのが好きなんですよ。煮詰まった時には一つ前の駅で降りたりして…。
モノをつくるって特別なことのように思われるけど、本来は、歩くことのように自然なことなのではないでしょうか。
そうした気持ちを込めています。」歩くことで景色は変わり、革について、カタチについて、それを使う人について、色々なものが視界に入ってくることでしょう。
自分の足で歩みながら、山本さんはつくりつづけます。