15.05.19

硬く冷たい金属に手を加え、柔らかで人肌になじむジュエリーをつくるAtelier el(アトリエ エル)。ゆっくりと息を吹き込むように描かれた繊細なラインは、ひとつひとつ表情が異なり、身につけて唯一の存在感を放ちます。

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■マニュアル化できない感覚を大切にしています。

Ateriel elの二人(左:増田さん、右:岡本さん)

Atelier elの二人(左:増田さん、右:岡本さん)

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神戸の古いビルの一室にAtelier elのアトリエはあります。
主はデザイナーであり、ご夫婦でもある岡本さんと増田さん。
ブランドを立ち上げる以前は、アパレル会社の彫金部門で働いていました。
そして次第に〝自分たちらしいものづくり〃がしたいという思いを抱いて独立。

「もちろん彫金の技術は必要ですが、
ジュエリーをつくりあげる工程はほぼ独学なんです。
良くも悪くも自由にものづくりを楽しんでいる感じです。

正攻法じゃないから予想できない結果を得られることがあるし、
金属の叩き方や石の配置も〝感覚〃でつくっていくので
マニュアル化できない。

たとえば、同じように見える歪み方でも、
あっちはダメだけどこの感じはイイ、という自分たちにしか分からない
ルールがあるんですね。だから、イヤリングの地金ひとつでも外注せず、
自分たちの手でつくります」

楕円のラインのゆがみや、敷き詰めたダイヤモンドの原石の大きさもさまざま。

楕円のラインのゆがみや、敷き詰めたダイヤモンドの原石の大きさもさまざま。

 

ピアスのように見えるイヤリングの地金も手技によるもの。素材やデザインがぐっと引き立つ。

ピアスのように見えるイヤリングの地金も手技によるもの。素材やデザインがぐっと引き立つ。

制作途上で現れる、いびつさ、ラインの描き方、配置、すべてに定型はない。

少し時間がかかっても、自分たちの手でつくるからこそ
Atelier elの作品が完成します。

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■モチーフは自然界にある

Atelier el のジュエリーに使われるのは、おもに10金、ダイヤモンド、
真珠、ダイヤの原石など。
それぞれの素材の魅力について伺いました。

「10金は少し赤みがかった渋い金色です。より肌の色に馴染みやすく、
トップの石を引き立てる色でもあると思います。

真珠は雫、ダイヤモンドは光のイメージでしょうか。
ダイヤの原石は大きさが不揃いなので、
石の形を見てどうしたら魅力的になるかを考えます。
小さな原石を敷き詰めてみたらどうだろう? とか」

魅力的なものを…と考えながらデザインするとき、
二人が頭の中で思い描くのは自然の風景だといいます。

「木の枝のふりかた、生え方、木立の並び、波の立ち方…。
自然界のものには不思議なルールがあるでしょう?
それを見ていて、とてもきれいだなぁと思うんです。

やはり自分たちが無意識に美しいと思っていた情景が
作品のモチーフになることが多いですね。

それと、大事なのは身につける人に沿うデザイン。
手や指、耳、首元のラインに自然に沿って、美しく見える
ジュエリーづくりを心がけています」

 

火をあてる、金属を叩く、のばす、磨く…etc。いくつもの工程も経て作品が完成する。

火をあてる、金属を叩く、のばす、磨く…etc。いくつもの工程も経て作品が完成する。

 

刻印を入れる繊細な作業

刻印を入れる繊細な作業

 

増田さんは「展示会で直接お客さまと話すと、
いろいろなことに気づきます」と、嬉しそうに話してくれました。

「イヤリングの石の位置やチェーンの長さなど
『もう少しこんな感じになったら嬉しい』という話を聞くと、
次の作品づくりのヒントにしています。

自分たちが気づかなかったことを教えて頂ける。
それはとてもありがたいですし、お客さまと一緒につくっている感じです」

Atelier el の今後の目標は? と訊ねると、
岡本さんは「お客さまが気に入って下さったものは
長く使って頂きたいし、
僕らはずっとメンテナンスできる工房でありたい。
可能なかぎり手を止めず、
自分の人生よりも長く続くブランドでありたいです」
と教えてくれました。

 

(写真、文 長井史枝)

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