15.10.20
読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋…いろいろとありますが、私はもっぱら食欲の秋(一年中ですが)。美味しい物を食べることはもちろん、秋にはなぜだか食にまつわる話が無性に読みたくなって、毎年手にとってしまう本があります。
■わたしの食べ物バイブル
学生時代にふらりと入った街の古本屋さん。
そこで目に止まったのは、なんともそそられる
題名がついた池波正太郎のエッセイでした。
数ページ立ち読みしただけで、何とも言えない
文章の軽快さや、懐かしくどこかせつない
情景の描写にノックアウトさせられてしまった
ことを覚えています。
特に繰り返し読んでいるのは、
『散歩のとき何か食べたくなって』(新潮文庫)と、
『食卓のつぶやき』(朝日文庫)の2冊。
池波正太郎が足しげく通った料理屋や
幼少期の思い出の味などが綴られていて、
お腹が空いた!そして、わたしも作ってみたい!と
ついつい自分の食欲も掻き立てられてしまうのです。
■読んで美味しい、作って美味しい!
池波正太郎の小説やエッセイに登場する料理を
春夏秋冬でまとめた書籍もあります。
特に『そうざい料理帖 巻一』(平凡社)に出てくる
料理はどれも素人が気軽につくれるものばかり。
レシピは載っておらず、エッセイの一説とイラストでつづられていますが、
読んでいるうちに、今夜の献立はこれ!となることも。
鶏細切れ肉の水炊き、秋鯖のレモン〆、
浅蜊と白菜の小鍋だて、鮪のヅケ焼きなどなど…
我が家の定番になったものも沢山あります。
■文豪たちは何を食べていたんだろう…
「作家の○○」シリーズの中の1冊、
『作家の食卓』(コロナブックス)も
この季節につい手に取ってしまう本。
池波正太郎をはじめ、食通と言われた作家たちの
普段の食卓や行きつけのお店、食にまつわるエピソード
などが写真とともに贅沢に紹介されています。
こちらも随所にレシピがちりばめられているので、
この人はこんな食事をしていたんだな~
などと思いながら料理を楽しめますよ。
■繰り返し読んでしまうのは…
なんだかとても渋いラインナップになってしまいました。
でも、どれも新鮮な驚きをあたえてくれるものばかり。
購入してから10年経っても飽きずに繰り返し読んでしまうのは、
歳を重ねるごとにそこに書かれている情景に
少しづつの実感が伴ってくるからでしょうか。
読むたびに、いままでは感じなかった思いや懐かしさ、
自分の大切にしたい味やお店のことなどが浮かび、
わたしも毎日の食事をおもいきり楽しもう、
という気持ちにさせられます。
食欲の秋と読書の秋、どちらも満たしてくれる”食”にまつわる本は、
いつまでも心を捉えて離しそうにありません。