15.3.17

箱田友眞さんと香譽さん。職人であるご夫妻による箱田鞄の新しいアイテムが届きました。箱田鞄がつくるのは丈夫で長く使える鞄、素材の質感を活かした鞄。デザインも修理しやすいシンプルな美しさを心がけています。

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■鞄職人ですが、僧侶です

職人同士のご夫妻は八王子に「箱田鞄」を構えています。
ご主人の友眞さんは広告デザインの仕事を経て鞄制作の道へ。
鞄職人の藤井幸弘さんのもとで学びます。
ちょうどその頃に奥様である香譽さんとの出会いがあり、
独立してからはどんなことも二人で考え支え合う
職人夫婦になりました。

1

「ビスケ」というトートバッグを制作中の友眞さん。馬の鞍にも使用される丈夫な革を、ザクザクと縫い目正しく、美しく縫製。右手に針と、ひしきり(革に穴をあける道具)、左手にもう一本の針を持ち、両手に持った針で8の字を描くように縫っていきます。こうやって人の手で縫われた鞄はとても丈夫、ゆるやかなカーブを描いて縫製する仕事も手縫いだからできること。

 

2

ミシンを操るのは主に香譽さん。「友眞さんはしっかりとしたフォルムの手縫い鞄、私は帆布鞄も好きですね。つくる鞄はそれぞれ違いますがサイズやマチの幅はどれくらいが使いやすいだろう?って二人で相談して決めます」

 

東京を拠点に制作活動を4年ほど送り、
縁があって山梨県の常楽寺での修行へ。
お務めをしながらお二人の鞄づくりはつづきます。

「ご住職夫妻も仏画や陶芸など、ものづくりをされる方ですから
お話も興味深かった。それにもましてご住職が人のために
何ができるかを考え人を受け入れる場所をつくろうとする姿勢に深く感動して、
私はここには人として学ぶことが山ほどあると思ったんです」(友眞さん)

常楽寺の八王子移転を機に現在の箱田鞄に落ち着くまでの約10年。
何かに導かれるように鞄づくりと人間修行に励んだ日々でした。

 

3

■素材に感謝して最後まで使いきる

どこか懐かしさが漂う木造の工房で友眞さんが革に針を通し、
香譽さんがミシンを動かします。
友眞さんは僧侶と鞄職人を両立するうえで
生き物を殺生した素材を使うことへの葛藤もありました。
「矛盾している気がしましてね。でもぼくらは必ず何かをいただいて
生きているのだから、素材に感謝して鞄をつくってそれを使う人に
喜んでもらおうという考えに至った。以来つねに調和と循環という
言葉が頭の中にあります」
仏門に入ったこともいま確実に箱田鞄の鞄づくりに活かされています。

 

5

強度と防水性を高めるため蜜蝋をコーティングした糸を使用。表裏、糸を引っかけないよう注意しながら、ひしきりで開けた同じ穴に針を通して縫い進めます。

 

 

4

箱田鞄を代表する鞄。愛称「車掌バッグ」はファスナーが登場するまで主流だった仕立て。右側のバッグには肩にかけたときに揺れないようショルダー部分に改良を加えた。コバ(革の断面)は手磨き仕上げ、使い続けるほどに味わいが増すタンニン鞣しの革を使用。

*「BonAppetit13」の記事を編集し掲載しました。
撮影/Hideki Miyazaki

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