フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2025.2.26
小鳥のさえずりが聞こえ、枝先に芽が出ているのを見つけました。
まだ冬の防寒は手放せませんが、春めいてくるのも
そんなに遠くないのかもしれません。
北国ノルマンディでも移ろいを感じられるようになったので、
きっと日本も始まりの季節に向かう雰囲気なんだろうな、
と思いを馳せています。
ENYOは年に一度のリリースですが、デザインとパターン、
縫製業務をすべて一人で行うため、準備に長い時間を要します。
前年の販売が一段落する初夏ごろからデザインと生地の買付をスタートし、
夏の間に仮縫いトワルを組み立て修正をし本縫い用のパターンつくり、
自分で実際にサンプルを使ってみてよい出来だと思ったものを商品に採用しています。
秋くらいから納期の春までは縫製作業です。
現在は納期までもう間もなくの頃、迫る時間に焦りつつも妥協はしたくないので
懸命に手を動かす毎日です。
まだ作業の真っ只中ではありますが、仕上がったものを友人に試着してもらい
撮影をしました。
アトリエに籠もってしばらく自分だけの世界にいたので、
こうして家族以外の人にお見せして反応が返ってくるのは新鮮です。
とはいえ相手はお友達なので、そこまで厳しい意見はなく、
ひととおり褒めてもらえてただ私に自信がつく時間になってしまっている気がしますが、
フランス生活において自分を強く信じられることは最も大事な要素だと感じています。
謙虚さだけではこの国で生きていけませんから。
今日は友人に好評だった 新作コレクションから、 一足先に一部をご紹介をさせてください。
昨年もおつくりした小さなスカーフを模した衿のブラウスを、
今回はアイレットワークで水玉模様にしました。
衿元にデザインがあるとお顔の印象が華やぎますね。
何色か色違いでご用意しましたが どれも夏らしい仕上がりになりました。
台衿と折返り衿が別断ちではなくつながったパターンの衿を
ターンダウンカラーというそうです。
メンズのスポーツウェアで時折見かける仕様ですが、
構造上きれいに衿が立ちます。
パッとラフに着られる格好さがありますが、衿先を小丸にして
ENYOらしいちょっとのユーモアを加えました。
袖にスモッキング刺繍をすると、ギャザーの広がりが魚の尾びれのような
シルエットになることから「フィッシュスリーブ」と呼んでいます。
私が勝手にそう名前をつけました。
腕の動きでひらひらと泳ぐように揺れるのが涼しげです。
まだ服になっていないパーツの状態ですが、こちらはワンピースの袖のカフスになります。
夏空を飛び回るツバメたちを思い浮かべました。
洋服のハギレを使ってつくるハンカチもたくさんご用意しています。
ハンカチを持つ習慣のないフランスでは、
テーブルナプキンにしたいと言われることが多いです。
そのため同じ色のものを人数分ほしいと希望されたことが過去にありましたが、
服づくりの副産物としてアップサイクルを心がけているので、
ハンカチのためだけに新たに生地を使うことはありません。
様々な色とモチーフの組み合わせを楽しんで選んでいただけたらいいな、
と願っています。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/