フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2025.7.29
夏真っ盛り、暑い日が続いていることと思いますが
皆様お元気でしょうか。
こちらは7 月14日の革命記念日を過ぎたあたりから
バカンスを取る人たちが多いようで、我が家の生活圏内では
グッと人の気配が減ったのを感じています。
うちは特に休む予定はないのですが、私は夏のこのゆっくりした
雰囲気をとても気に入っています。
働いている人もリフレッシュできているのか、横柄な人がほとんどなく、
みんな機嫌よく見えるからです。
フランス人はバカンスのために仕事をするとはよくいいますが、
年5週間の有給休暇取得(うち1回は2週間のまとまった休暇)が、
働く人々の心身の健康に不可欠であると労働法で義務化されています。
フランスでは気軽にお休みが取れるのではなく、
取らなくてはいけない法律があるのですね。
日本にもおそらく似たような決まりがあるかと思いますが、
全員がしっかり休む習慣がないと、現実的になかなか自分だけ、
とはいかないのだろうなと想像しています。
もうすぐお盆休みですね。
大人になってからも楽しい夏の思い出があるはずなのに、
小さな頃の夏休みが色濃くずっと心に残っています。
いつも仕事で忙しくしている家族が一緒になって遊べることが嬉しく、
子供ながらに安心したものです。
住宅街は静かになりましたが、観光地でもあるルーアンは
街の中心部に行くと賑やか。
普段はあまりないことなのですが、この時期だけは英語で
接客をされることも多いです。
サン・マクルー教会裏手の中庭には中世に造られた回廊があります。
これは14世紀のペスト大流行により亡くなった人々の遺骨を
収容する施設でした。
その被害は悲惨なもので、当時市民の7割ほどが
この病気で息を引き取ったそうです。
コロンバージュと呼ばれる伝統的な木枠造りの建築で、
梁には骸骨や埋葬に使うスコップの彫刻が施されています。
この建物は 数年前まで 美術学校として使用されており、
その頃に家族がここへ通っていたので私にとっても思い入れのある場所です。
これも文化の違いでしょうか、日本で墓地だった建物を
そのまま学校にしたというのは聞いたことがないので、
こういった歴史的背景があるところだと初めて知った際には驚きました。
現在は美しくリノベーションされて素敵なレストランが入っています。
夕方、アペリティフを楽しむテーブルからは様々な言語が聞こえていました。
いつも近くで用事があるとここまで足を伸ばしていましたが、
もう少し静かな時に再訪することにして今日は家路につきます。
日本でもフランスでも一番好きな季節は夏です。
鮮やかでどこか儚くもある景色、みずみずしい夏野菜、穏やかな人々、
このままずーっと夏のバカンスだったらいいのにな。
なんて、子供みたいなことを言いたくなりますが、
短い夏を存分に楽しもうと思います。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/