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17.08.21

《つくり手ファイル》さざなみ おだやかな衣服/大路真穂さんインタビュー

<!--リネンワンピースのオーダー会「さざなみ おだやかな衣服」が、二子玉川のshedで9月2日より行われます。秋冬のために仕立てられたリネンのワンピースを、「花 植物の手仕事 つぐみ」のブーケやスワッグとともにご覧いただける企画展です。会期終了後の9月5日より、エンベロープオンラインショップでも販売をスタート!ワンピースのつくり手、さざなみの大路真穂さんにお話を聞きました。-->※こちらは過去のイベント記事です。2017年9月4日に終了しました。 ※2019年6月22日(土)~24日(月)に、2回目の個展を開催します。詳しくはこちら

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■きっかけはスタッフが着ていたワンピース

今年の春のはじめ、あるスタッフが着ていたワンピースがエンベロープチームで話題になりました。「着ているとよく褒められるんです」という、そのワンピースは、くるぶし近くの長めの丈、丸みを帯びた袖、ほどよく寄せられた襟元のギャザー。装りたてられていないけれど女性らしく見せてくれて、スタッフの所作もいつもより優雅さを帯びていてました(着ているとちゃんとしなきゃ!と思うそうです)。

▲スタッフが着ていたのがこちらの「デイリードレス」。普段ワンピースを着ない人にも取り入れやすいシンプルな一枚

そのワンピースのつくり手が、愛知県名古屋で活動する大路真穂さん。「さざなみ」という屋号でリネンのワンピースを一人で仕立てています。

■眼鏡売り場に立つためにはじめた服づくり

さざなみのラインナップは基本的にリネンのワンピースのみです。なぜワンピースなのかという問いには予想外な答えが返ってきました。大路さんが服づくりに携わるまでのお話をご紹介しましょう。

▲名古屋のアトリエで服づくりをする大路真穂さん。裁断から縫製まで一人で行うため、仕上げられるワンピースは一日2着

「洋服が好きなのは、幼いころ母が服をつくってくれた影響があるのかもしれません。私も中学生くらいから自分でつくるようになりました。大学は家政科に進み、繊維のことやパターンのことはそこで学びました。卒業後は洋服の販売の仕事をしたかったのですが、当時の就職先は大手のセレクトショップに限られていて、自分自身がしっくりこなかったこともありなかなか決まりませんでした。そこでふと思い立って眼鏡屋で働くことにしたんです。
眼鏡は医療機器ということもあり、きちっとした格好をしないと売り場に立てませんでした。会社からはOLのようなスタイルを求められたのですが、受け入れがたくて(笑)。でもロングのワンピースなら何も言われないことに気づき、その頃の愛知では欲しいものが手に入りづらかったので自分でつくることにしました」(大路さん)

-それでワンピースだったのですね。服づくりは大学で学んだのですか。

「学校では専門的なことを教えてもらったわけではないので、ほぼ独学なんです。本を見たり好きなワンピースを解体したりして、つくっては直しつくっては直しを繰り返してパターンをつくりました」

その後、大路さんが着ている服を見た人から欲しいと声がかかるようになり、6年務めた眼鏡屋を退職。服づくりの仕事をするようになったそうです。

■季節ごとに選んだリネンを縫う

スタッフが着ていたワンピースは、ぱりっと張りのあるリネンでした。明るいものを求めていた冬の終わり、落ち着いたグリーンがまぶしく見えました。
さざなみでは5つのパターンを揃えていて、シーズンごとに生地を変えて仕立てています。風合いや育てる楽しみを味わえることに魅力を感じて選んだ素材、リネン。生地を変えるだけで違うものに見えるから不思議です。黒やグレー、ネイビー、白などの落ち着いた色のほか、その時にぴんときた色が加わります。

今回の展示会のために選んだ生地の一つが「CLAY」。レンガのような秋らしい色です。さらにシロクマやマシュマロのようにほんわりとした生成色の起毛リネンも。会場となるshedを見てイメージした「ミスト」は、早朝の山にかかる霧のようにグリーンがかったような白。少し透け感のあるこちらのリネンは、shedでの展示会のみの取り扱いです。

▲この秋冬のために選んだリネンの一つが、レンガのように赤みがかった茶色「CLAY」

▲朝もやのような白のリネン「mist」

■袖を通すとわかる、おだやかな衣服

19世紀の絵画や映画などからインスピレーションを受けてつくられたさざなみのワンピースは、スカート丈が長く重みのあるシルエットが特徴です。

-人が着ると丸みが出てふんわりとした感じがしますね。ワンピースを着たスタッフが仕事をしている時、スカートの動きがきれいだなと思いました。服自体はシンプルなのに女性らしい感じがします。

「さざなみという名前には、スカートがさざなみのように揺れているイメージもあるんです。たっぷりとギャザーが入ったスカートをはいた人がしゃがんだ時にパッと丸く広がる感じが好きで。スカートは立っている時だけでなく、座った時にもどう見えるか意識して長さや切り替えを調整するようにしています。
袖は、ふくらみがどこに出るかを考えながらパターンをつくっています。ワンピースによっては、袖をまくったときに後ろに丸みが出るようになっているんです」

▲縫製で好きな作業の一つが糸の始末。返し縫いをした後、生地のつなぎ目に糸を隠して玉止めをするのが大路さんのやり方。「ほどけないか気になって。正しい方法ではないかもしれないし、面倒ではあるけれどこれで大丈夫って安心するんです」

▲映画「アンナ・カレーニナ」の登場人物から名づけたワンピース「ニコライ」。袖や背中などをタックで仕上げた甘すぎずすっきりと着られます

今回の展示会のタイトルは「さざなみ おだやかな衣服」。“おだやか”という言葉について、大路さんはこう話します。
「人は服を着ることで、どうありたいかを表現しているのだと思うんです。私の場合はさざなみのように穏やかでありたくて、そんな思いをこめてワンピースをつくっています」

2019年6月22日(土)~24日(月)に、2回目の個展を開催します。詳しくはこちらから。

カテゴリ:エンベロープ, shed, つくり手ファイル

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