早速工程を見せていただきました。


型紙を替えながら、のりの入った染料を次々と塗り重ねて色をつけていきます。
布の上に型紙をのせ、上からスケージで染料をつけるのです。



そしてこの「ふるいおとし」。
ふるいを使って刷毛につけた染料を落とし、ふわりと全体に濃淡あるぼかしをつけます。
この染料にはのりを使いません。だからきれいに粉状に散るのですが、 刷毛につけた染料の量と、手の動かし方や力加減が命。
むずかしそうです。
「人が動いたり、ちょっと風が吹くだけでも影響が出てしまう繊細な作業なんです。
だから夏場でもクーラーはつけられないし、かといって汗が落ちたら最後でしょう?」 肉体的にもつらそう……。
刷毛は鹿の毛。ふるいはもともと銅製でしたが、最近はステンレスに変わりつつあるとか。
「銅のほうが柔らかくて具合がよかったんだけど、これも時代の流れですかね」。

微妙なタッチが必要なところは、刷毛で作業。
これは、スケージを使わない「ぼかし」。
墨で一息に描いたような線を、型紙と刷毛を使いながら見事に再現していきます。
刷毛をくるくる回して絵を描くような感覚で塗っていき、 さらにもう一度同じ色を重ねることで、筆だまりのような部分ができ、 まさに手描きに近い感じを表現していきます。






染料が乾かないうちに作業するので、汚れないよう全体におがくずを たっぷりまぶし、張り板からはがします。
「桜や松など、アクの出るおがくずはダメなんです。
つがの木がいいんですよ。
ただ、最近はおがくずも貴重になってきていて「くず」じゃなくなって ますけどね(笑)」。


すべての絵付けができ上がったら、最後にグランド色(地色)。
スケージで平らにこすって染めます。
「最後に濃い色を塗り重ねられるのは、のりの防染力があるからこそ。
のりの上にはいくら塗っても染料はつかないから、 地の白い部分にだけ、色がつくんです」。
風呂敷の裏表を違う色で染められるのも、こののりの力というわけ。
すごい知恵です。