ものづくりを訪ねて
kohoroのちりとり〜二人のつくり手からの回答〜


掃除道具=掃除機かもしれませんが、それでもどの家庭にも一つ、ほうき・ちりとりのセットがあるのではないでしょうか。屋外で使うのはもちろん、例えば掃除機の音を怖がる小さな子供がいるご家庭や夜遅い時間など、持っていると便利なものです。

実際、KOHOROにもこのセットを求めに来る方が結構いらして、特に今の季節はそうしたお客様が多いのだとか。
そんな需要もあって、KOHOROでは「自分たちで掃除道具をつくれたらいいね」と話していたのだそう。今回、その夢の半分がかなってオリジナルのちりとりが完成しました。

制作したのは、木工家具工場と金属加工工場。
この二つの場所から、木製ちりとりとアルミ製ちりとりが生まれました。


横浜市都筑区と緑区の境目。
車通りの多い道路から入り、区境に流れる川べりを歩くと、景色はすぐにのんびりとしたものに変わり、やがて明るい色の木でトリミングされたadati&co.,ltdの看板が見えてきます。
木製のちりとりを制作した、安達家具さんの工房です。






その名からもおわかりになる通り、安達家具の本業は家具をつくること。
カフェなどのお店のために、木製の家具を手掛けています。
でも同じ木とはいえ、ちりとりのような雑貨をつくってほしいというお願いには、戸惑いはなかったのでしょうか。

「カッティングボードやカトラリーをつくる職人もいるので、それはなかったですね。大きくても小さくても、ものづくりには変わりはないですし」と、安達健介さん。3人の職人からなる安達家具のリーダーです。

メンバーは出身地もこれまで経験してきたこともそれぞれですが、全員に共通しているのが「ものづくりが好き」ということ。
「今までこういう取り組みをやったことがなかったのですが、もっと増やしていってもいいのかも。そうですね、楽しかったのかもしれない。」





「最初はベニヤだったんですよ」
と安達さんが見せてくれたのが、こちらのちりとり。サンプル第一号です。
背板と側板の接合部分にだけ無垢が使われていて、他は全てベニヤです。

でも木口(大きな面に垂直に接している細い面)などがどうしても気になり、「みんなで話して、やっぱり無垢がいいんじゃないかということになりKOHOROさんに提案したんです。そうしたらやらせてもらえることになって…」そのあたりからKOHOROから伸ばした矢印は一方方向ではなく、お互いを結ぶものとなったようです。

ゴミを集める底板部分は、反りや割れが生じないよう機能性を優先させてベニヤのまま、他は無垢にしようということになって再スタート。使う材はホワイトオーク、KOHOROがイメージする木に近く、安達さん自身も好きで使い慣れている材です。
ちょうど家具をつくった時に出た端材もあり、木を無駄しないですむというメリットもありました。
その後、いくつかかたちの変化を経てトレイが完成。





ちょうどお邪魔した時はこのトレイができあがって、ハンドルを制作しているところでした。
握りやすく収納をするときに邪魔にならない大きさ、そして丁寧に磨き植物オイルで仕上げられた手触りのよさ。
けれどこのハンドル、ここで取り付けられるのではありません。大切に箱に入れられて、送られる先は稲城市の金属加工工場。
もう一つのちりとりの作り手がいるところです。