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23.08.25

《ベルギー出張旅行記》第1話:LIBECO工場へ行く

今年1月、フランスパリの国際見本市メゾン・エ・オブジェの開催をきっかけにベルギーにあるLIBECOの工場へ行ってきました。

LIBECO製品が生産される様子やブランドの今、旅のことを、セールス担当まつもとが3回にわたってお届けします。長くなりますが、どうかお付き合いください。

■リネンと僕とベルギー

思い返すのは、去年の12月中旬。「まつもとくん、フランスに行ってみる?」と社長に聞かれ、チャレンジします!と、答えて決まったベルギー&フランス出張。

2023年1月16日の深夜、羽田空港から23時30分発のエールフランス271便に乗り、シャルル・ド・ゴール空港をめざしました。ベルギーはフランスと隣接し、パリから首都ブリュッセルまで高速鉄道で約1時間半の距離にあります。

▲出発前の羽田空港。飛行時間は14時間くらい

今回の出張が、そもそも私にとってはじめてのヨーロッパでした。長い時間飛行機に乗る=機内食が出るということで、憧れのフレーズ「ビーフオアチキン?」と聞かれることにまずは感動(笑)

▲選んだのはチキンで、マッシュルームと赤ワインの煮込み。デザートは砂糖をまぶしたドーナツでした

1年前の2022年1月、カフーツに入社した私ですが、以前はフローリング会社に勤めていました。私の妻はリネンが好きで、もともと家にいろんなメーカーのものがあり、その中にはLIBECOのキッチンクロスも。自分が本当にいいなと思うものを売っていきたいということから、転職。

シーツは前からリネンに思い入れがありました。

ある時、愛猫のバジルが破いてしまって、今回は安いもので済まそうと別のものを使ったら、今まで使っていたベッドリネンが特別だったことを痛感したんです。

▲ベッドの上のバジル。リビングは空調がきいていて涼しいのになぜか移動しません。夜中もこのまま足元に

最近は破くこともなく、バジルは一日中LIBECOのヘリテージシリーズのシーツの上で寝ています。そんなところが僕とリネンの縁です。

***

今回の出張では実際にLIBECOの工場に行けるので、ふだん取り扱っている商品がどのようにつくられていて、どんな人がつくっていて、どんな会社なのか理解度を深めたいと思いました。

飛行機は予定時刻通りにパリに到着。着いたのは朝6時半。天候は曇り。気温は低く、日本よりもずっと寒さを感じました。

▲飛び交うフランス語にドキドキ……

社長に「無事に着きました」とSMSメッセージを送ると、日本から返信が。

「今回の出張で何か仕事をしなきゃとプレッシャーを感じずに、まずは色々と楽しんでください。それを将来のアセットに変えていくことが何よりも重要です」

よし頑張ろうと、やる気モードに。

空港直通のシャルル・ド・ゴール駅から、9時5分発の高速鉄道TGVに乗ってベルギーへ。TGVは日本でいう新幹線のような長距離移動列車です。

▲公共交通機関は遅れると聞いていたので、時刻通りTGVが来て一安心。何度も乗車券に書いてある座席番号を確認

向かうは、ベルギーへの玄関口となるリール・ヨーロップ駅。ここでLIBECOの生地部門を統括するリーベンが車で送迎に来てくれるとのことで、改札前で待ち合わせ。

駅は人が多くなく、すぐにリーベンと分かりました。

「ハイ、リーベン!」
「ナイストゥーミートゥー」

LIBECOの本社があるミューレベーケは、ここから30分くらい。移動中の車内では、機内でメモした雑談で話すことリストを頼りに話しました。

■メゾン・エ・オブジェ前のLIBECOショールーム

LIBECOの本社と工場はミューレベーケの中心部から車で10分程の場所にあります。

▲車の窓からの景色は長閑な風景

ミューレベーケは農業と軽工業が盛んな町。LIBECO工場の周りはもっと工業地帯でだだっ広い場所にあるかと思ったら、住宅街から一本道にそれたところにありました。

LIBECOを訪ねた1月は、春に向けてオフィスや倉庫を建設中。敷地内には仮のオフィスとして大きなプレハブ小屋が建っていました。

▲プレハブのオフィス。スタッフはPCを持ってここで仕事をしていました。奥にある天然木の板張りの外観が2階建ての本社でその奥に工場があります
▲建設中の本社

まず最初に通してもらったのが商談スペース。ここでサンプルを見せながら打ち合わせを行うそうです。並んだ商品を見てLIBECOに来たことを実感。同時に緊張が高まります。

今はメゾン・エ・オブジェの直前でいつもはもっと色々な種類があるそうです。見たことがない商品は若干あるくらい。

いつもメールでやりとりしたエレン(右)やキャリーンにも会えました。


こちらが私を案内してくれたリーベン。

まずはソファに座って、今日のスケジュールを確認。「コーヒーと水、炭酸水、どれ飲む?」とリーベン。

ケータリングのカラフルなサンドイッチも出してくれました。やっぱり向こうはパン文化なんですね。内心めちゃめちゃお腹が空いているけど、すぐに手に取っていいのか……。


「食べないの?遠慮しないで。どれが食べたい?」

サーモンが入っているサンドイッチをとりました。ふわっとしていなくてガシガシと咬むようなパン。3~4口で食べられて、結局、3個食べました。

■手の込んでいるところと自動化の二刀流

昼食後、さっそく工場を案内してもらいました。工場の中に入った瞬間、一斉にいろんな音が耳に。

機械音に負けない大きな声で「新しい倉庫を紹介するよ」と、リーベン。

経糸の部門を通り過ぎた先に、最近増設したという新倉庫がありました。一気に天井の高さが変わり、綺麗で新しい空間が目に飛び込んできました。

ここには、糸、約3万メートルのルームステート生地、備品が保管されています。リーベンは「僕もはじめて入ったよ」。

これらを運ぶ際は、無人機も導入しているとのこと。人がいない倉庫内には、荷物を全自動で運ぶロボットの姿もみつけました。

ロボットはライトで人やものを探していて、障害物がないと動く様子。何かをみつけると停止します。

新倉庫でこれだけ新しくものをつくれるということから、企業としての成長を肌で感じました。

私は他の縫製工場に入ったことがなかったので比較ができませんが、手をかけるところは原始的に人の目を通しているけれど、人の手を省けるところはどんどん自動化しているのが予想外でした。見学している間も常に物流は動いていて、忙しそうにしていました。

■LIBECOの判断基準にものすごくこだわる

次に、糸の品質検査室を見学。染色した糸や入荷した糸が品質を満たしているかを検査する部屋を見せてくれました。

ここで行われる検査は、糸に含まれる水分量や引張強度、色の均一性と色合いです。入荷した糸はロットごとにすべてを検査しています。

色の均一性と色合いは、3つの異なる蛍光灯で調べていたのに驚きました。

何種類かの電球を使い分けて、この電球だったらこの色になる、と、自分たちの基準の中におさまっているかを確認するんです。

ベルジャンタオルを織るなら、たとえば5色あれば、それがちゃんと均一に自分たちの基準色に染まっているか、糸を確認しないと織れないということ。

検査を自社でやっていて、自分たちのクオリティでなかったら使わないという考え。私にとってこれらの話は印象に残りました。その結果、ベルギー王室御用達のリネンであったり、(よいリネンの証である)マスターオブリネンという称号を得ることに繋がっているだろうなと思いました。

■適切な速度で織ることで高品質な生地が完成する

糸の品質検査室から、経糸をつくる部門にもどってきました。まず布を織る前に糸の準備をします。ここでは経糸をつくるために、小さなボビンに巻き付いた糸を大きなボビンに巻き付けています。

▲小さなボビン。最大480のボビンを収納できます
▲各ボビンの糸は前面にある大きな回転ローラーに巻き付けられて、断面せん断機におくられます
▲大きな回転ローラー(ワーピングマシーン)は、平均的な太さの経糸が3000メートル、細ければ最大10000メートルまで巻けるとのこと

さきほどまとめられた大きなボビンの経糸を使用して、すべての糸はそれぞれの糸に1本ずつドロップワイヤーに通されます。

ヘドルはヘルドフレーム(経糸を上下に動かす機)と呼ばれる大きな長方形の枠に取り付けられています。製織中、上下に動き、糸と糸の間に隙間ができ、この隙間に緯糸が通ります。

布の織り方はヘルドフレームが上下する順番で決まります。最後にそれぞれの糸が筬(おさ)を通り、筬の動きで横糸を手前側に打ち込み織られていきます。

途中、機械がストップしてしまいます。

少しでも異常があると、織工がすぐに駆け寄って糸の状態を確認。

注目して欲しいのは、布を最高速度で織っていないこと。

理由は糸の不規則性で太さや強度が均一でないので、ずっと太い糸を織っていたら最高速度でいいのかもしれないけれど、太、太、太、太、細、細、細になったときに、ブチって切れちゃう可能性がある。そういう面でデータをもとに適切な速度で織るということで生地が完成しています。

▲織工は1人につき4台くらい担当。フランス語、フラミッシュ(オランダ語圏のフランス語)、ドイツ語、リベコでは様々な言語の人が働いていました
▲機械音から鼓膜を守るためにみんな耳栓をしています
▲生地を織る際に大量に発生する毛羽も対処。切れ端や毛羽は建材として再利用されます
▲織機のすぐ上に、レールで毛羽を吸う機械が備え付けられていました


■心強いスペア部隊。検品しながら修復も同時に

工場は日夜稼働しているため、機械の部品を修理するスペア部隊が工場内に常にいたり、機織りの勉強するスペースもありました。

織り上がった生地は全て人の手によって検品されます。たとえば500mの反物があれば、それを1mずつ状態を確認し、不足している糸、突出しすぎたネップ、汚れなどはひとつひとつ補修されます。

刺繍用生地(カウンティングリネン)にはさらなる検査があり、1cm四方あたりの糸の本数が一定で糸がすべて均一であるかチェック。

▲補修作業の手際のよさにあっけにとられ、感動しました
▲出荷形態になったら各国に送られ、私たちのオフィスにやってきます

生地を発注したら当たり前のようにLIBECOから届くけれど、私はこの製造ヒストリーを知って以来もう別物に見えます。

第2話では、オーダーメイドのラグブランド「シークレッツオブリネン」の様子をお伝えします。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

▲新社屋から見えるミューレベーケの街の風景

第2話はこちらから

<ジェイアール名古屋タカシマヤでの催事のお知らせ> ※終了しました
TLB HOME ポップアップ「ベルギー生まれのリネンで心地よく暮らす」
会期/2023年8月30日(水)~ 9月5日(火)
10:00~20:00 ※最終日は18:00まで
場所/ジェイアール名古屋タカシマヤ 9階特設会場

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