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21.12.14
LISETTEデザイナー平真実『布のはなし』のはなし(後編)
前編と後編2回にわたってお届けしている リゼッタ平真実による書籍『布のはなし』のはなし。前編での本の制作の裏側に続き、後編はリゼッタを手がけるまでのことやテキスタイルへのこだわりをデザイナー平に聞きました。 『布のはなし』のはなし・前編はこちら
■リゼッタとフランスのあいだをつなぐもの
「パタンナーとして働いていた20代のころ、勤めていたブランドのデザイナーから服づくりの基礎を学んだと思ってます。
当時はデザイナーズブランドの全盛期。彼がいなかったら、今こうしてリゼッタをやれていないと思う、そのくらい彼の影響力は強かったです」
「リゼッタを始めて2年目くらいのころ、上野の蕎麦屋で偶然お会いしました。
彼は高田賢三さんと同期で、私は彼からフランスの古着やレース、沢山の美しいもの、いいものを知りましたし、服づくりについてのあらゆることを学びましたね。それは食にまでおよんでいたかもしれません」
「十年以上ぶりでした『○○!元気にしている?』と名前まで覚えていてくださり、私は小さなブランドを始めたことを伝えるだけで、その直後、彼へのオマージュと彼のおかげで今の自分があることに本当の意味で気づきました。
そして彼もこの時期最後の鴨蕎麦を食べにきたのだと思うとすこしうれしくもありました」
「もとから古いものや布が好きだったけど、漠然としたものでした。社会に出て、そのデザイナーの環境のなかで、私はフランスのものが好き、と確信した気がします。そしてその思いはますます強くなって。
それもあって、次はフランスのブランドのアパレル会社に。そこでリネンを使った服に出合い、とにかくかっこよくて。当時、日本ではまだリネンの服はめずらしくて夏の高級なスーツくらいしかなかったし、着ている人もほとんどいなっかたような気がします」
■布が好き。ただ向くものをつくりたい
「デザインするときに大切にしていることは、とらわれないこと。これはコート生地だとか、メンズ地だとか、とらわれず、何用と役割をつけず。用途はひとまずおいておいて、生地をみたときのインスピレーションは大切にしています。
けして奇抜なものをつくろうとしてるわけではないけど何をどのように使うかは自由だと思うから。ただ向くものをつくるのが楽しい」
「気やすさや着心地は生地とパターンから、あとは遊び心。すべてはバランスだと思っています。
素材もなるべく自然発生したものを使ったり、でも化繊も着心地や機能性に必要部分であれば最小限使ったり」
■布から始まるデザイン
『布のはなし』には、アイテムごとの布のはなしに加えて素材のはなし、リゼッタがこれまで手がけてきたオリジナルプリントのアーカイブも掲載。サブタイトルは、「染め、織り、プリント」。多様な技術から成り立つ布を紹介している。
「たとえば昔つくられた生地がなんともいえずいい感じなのって、ある。私がこだわっているのはその手がつくりだすゆらぎみたいなもの。プリントもオートスクリーンをなるべく使ったり、手織りに近いシャトル機を使ったり」
「プリントっていろんな染色方法がある。リゼッタのオリジナルプリントはそういう技術の集大成です。こうやって過去のプリント地を本として残せるのは本当に感謝しています。
リゼッタのものづくりが、さまざまな製造業の方々にささえられていることもこの本を通じてつたえられたら」
書名/布のはなし
出版社/産業編集センター刊
著者/平真実
判型・ページ/A5判・124頁