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15.12.12
二人のお店ものがたり Lisette平真実×OXYMORON村上愛子
リゼッタのデザイナー平真実さんと、OXYMORONのシェフ村上愛子さん。洋服とカレー、手掛けるものはそれぞれ違うけれどつくる仕事をしながらお店のディレクションも行う二人に、改めてお店について仕事について話を聞きました。
■ リゼッタとオクシモロンのお店ができるまで
8月にオープンした鎌倉の店は、オクシモロンとリゼッタが同居した少し不思議なお店です。どんなきっかけで、一緒の場所で営業することになったのでしょうか。
平: ここ鎌倉の店は以前フレンチの店だったんです。
リゼッタだけでは広すぎるし、前の店の厨房ははずしてはあったけど、
飲食店用に整ってはいるからオクシモロンもどう?って声をかけたんです。
村上: ちょうどそのころ、オクシモロンも厨房の場所を探していて、
いつか2店舗目もつくりたい思いもあったので、一緒にやることにしたんです。
エンベロープ: 面白いレイアウトですよね。
外から見るとドアが二つあって、店内もきっちりと分かれているのかと
思ったらそうではない。料理をホールに運ぶ時に、
リゼッタを横切るつくりになっていて一つの店みたいだと感じました。
平: もともと入って左側はフレンチの店で、
今オクシモロンの客席部分になっているところは
また別のお店だったんです。最初はそのままのレイアウトで、
飲食と物販にわけるつもりでいたんだけど、
工事を進めていくうちに、店を隔てている壁が壊せることがわかって…
村上: 改めてどう分けようかって話になり…
動線を考えたら縦にスパンと分けた方がもちろん使いやすい。
だけど既に工事も進んでいたので、結局もともとキッチンだった部分を残して、
ブティックをまたぐかたちになりました。
結果的にそれがよかったなと思っています。
完全に分かれていたら、ただの隣同士のお店になっていたと思う。
エンベロープ: リゼッタは二子玉川、淀屋橋、自由が丘にも店舗がありますが、
お店をつくる時に大切にしていることはありますか?
平: その空間を生かすように心がけています。
淀屋橋店は昭和2年に竣工したビルに入っているのですが、
当時応接室だったその雰囲気を壊さないようなインテリアに仕上げました。
建物が古ければそれに馴染むように、
再利用できるものがあれば捨てずに使ってます。
村上: この鎌倉のお店、リゼッタ側の入口のドアも、昔のままですもんね。
平: ええ、そうなんです。
ドアも床も無垢でいい素材が使われていたから、
自分たちでサンドペーパーをかけたり、酷暑のなか結構DIYしました。
全部壊してしまった方が早いから、
業者さんにしてみれば面倒くさい相手だったかも…。
手っ取り早く手に入る材料でそれっぽくつくることはしたくなくて。
手入れをすれば使える古いものは、必ず使うように心がけています。
■ どんなことを大切にお店を営んでいますか?
リゼッタの1号店は9年前、オクシモロンは7年前にオープンしました。つくることよりつづけることの方が難しいというお店の運営。どんなことを大切にしながらお店を営んでいるのでしょうか。
エンベロープ: 村上さんは以前からお店をやりたいと思っていたんですよね。
こんなお店にしたいってイメージを描いていましたか。
村上: あんまりそいうのはなくて…。
ただみんなに食べてもらって笑顔になったらいいなっていう
すごくシンプルな思いだけでした。
うち、来客が多かったんですよ。常に誰かがいて寝泊りもしていて、
家族でなくてもただいま~って帰ってきたりするような。
お隣の家族とかもね(笑)私はまかないおばさんみたいな感じで
友達や近所の人たちみんなのごはんをつくってました。
平: ええ!?そんな感じだったんですか?
村上: 近所の子がおはようって来て朝ごはんを食べていったり。
いろんな子どもが入り混じっていました。
エンベロープ: 距離が近くて楽しいですね。食べ物を囲んで、
食べ物でつながっていく感じ。その頃はもうカレーづくりはしていたんですか。
村上: してました。でもカレーだけじゃなく何でもつくってましたね。
多摩川が近いから、みんなでよもぎとかたんぽぽを採りにいって
天ぷらにしたりとかね。
エンベロープ: そんな延長で自然にお店になっていったんですね。
でも、お店をやるとしても商業施設に入ったり、
同じフォーマットで多店舗展開するという選択肢もあるわけですよね。
あえてこうした小さな店というかたちにこだわっているのはなぜなんでしょう?
村上: 小さなお店でないとできないことを大切にしたいからです。
たとえばお客さんには嘘のないものを提供したいと思っています。
嘘があるってどういうことなのか、
うまくまとめることは出来ないんですが、自分の本来やりたくないものを、
何かの理由で正当化してやってしまうみたいな感じです。
大きな商業施設で、休みもなく、営業時間も長いとか、
制約が増えると何かの理由がどこかで生まれてくる不安が今はあります。
自分自身が嘘のないものと信じることができれば、
それはスタッフにも伝わるし気持ちよく働いてもらえると思うんです。
まあ、絶対ぶれない自分がいれば、
場所がどこであっても関係はないんでしょうけど。
平: それはなんとなくわかるような気がします。
リゼッタでは、ボタンやレース、アクセサリーにも
昔から使われている素材を使うようにしています。
見た目では違いがわからないようなフェイク素材のものが今は多いのですが、
それを納得して使うのは私には難しくて、
それが今の愛子さんの話と同じようなことなのかもしれません。
一般的には価格が大前提というのはわかるのですが、
自分がいいと納得できなければ、スタッフにも伝わらないし、
お客さまにも信用してもらえないと思っています。
そんなことを考えると、お客さまとの距離が近いお店で、
自分たちの考えが伝わるお店で売ることが必要かなと思っています。
エンベロープ: 目が行き届く規模の店で、沢山の人にとは言わないけど
わかってもらえる人を増やしたい、伝えていきたいっていうのは
二人の共通した思いなんですね。
(次回へ続く)
『二人のお店ものがたり』
―続きは、「今の自分をかたちづくっているもの」について語ってもらいます。
それぞれの道を歩く二人だけど、
いつどうやって今の自分に辿り着いたの?について。
来週掲載する予定です。
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リゼッタの新しい店が12月12日(土)表参道にオープンしました。
古い民家をリノベーションしてつくった新店は
「UNE MAISON LISETTE」と名付けました。
賑やかな通りから一歩入った静かな場所で、銀杏の木が目印です。
うつりゆく街の景色の中、変わらずにずっとそこにある、
そんなリゼッタの小さなおうちに遊びにいらしてください。