フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2022.10.31
先週末でサマータイムが終わり、
日本との時差が8時間になりました。
日暮れがぐっと早くなったことで冬も近いなと感じるものの、
この季節にしては異例のあたたかさが続いており、
温暖化の影響が懸念されています。
いつもならとっくに店頭にないはずの夏野菜が並んでいたり、
秋の果物も旬が遅れているのかやや高めだったりと、
日常生活の中でも違和感を覚えます。
しかし値段が高いのは、単に物価高騰のせいかもしれません。
戦争の影響でエネルギー不足も問題になっており、
できるだけ無駄をなくすよう気をつけてはいますが、
ニュースを見る度にあっちもこっちも本当にどうしたら
よいのだろうと心が暗く沈みます。
さて、アトリエでは来年度に向け縫製作業が始まりました。
これから春先まで毎日毎日ミシンです。
私は生地を見ながら「これを使ってこんなお洋服あったら
いいかしらー」とつくりたいものを決めていきます。
作品にはその時の気分が反映されますが、
今は普遍的なシルエットにちょっとユーモアを足すことが好きです。
可愛いものが出来てきたので、一足先にアトリエの様子をちらっとご紹介します。
不機嫌なんかバーンと吹き飛ばしてくれそうなピンク!
こちらは薄手で柔らかな質感が気持ちよいので、
贅沢に身巾をたっぷりとったブラウスにしました。
”BISOU” はキスという意味ですが、親しい人へ送る
メッセージの文末や別れ際など、愛情を込めて交わすカジュアルな言葉です。
着る方にもその周りの人達にも福があるといいな、
と思って刺繍しました。
こちらはボタン付け糸をお花のように留めてみました。
ささやかな部分ですが機械ではこういったかけ方はできませんから、
高級メンズシャツの世界では複雑な糸かけをすることで、
「職人が手付けしました」というアピールになるのだとか。
それはそうとして、お花に気がついた人が少し明るい気持ちに
なってくだされば、それが本望です。
先述の”無駄をなくす”に当たると思いますが、
お洋服の製作時にどうしても出てしまう端切れは
まずハンカチに仕立てています。
リネンはよく水を吸って速く乾くのでハンカチに最適です。
こちらは来春の楽しい催しのために、今からコツコツつくり貯めています。
▲ワンポイント刺繍をして仕上げます
もっと小さな端切れはぬいぐるみにしました。
中の綿もキルト芯の小さく残ったものを詰めています。
▲家族の誰かが着ていた着物だったと思います。小豆3粒包める布は捨てるな、と言いますものね
フランスの人に喜ばれるかなと思い、着物も着せてみました。
今は不穏な時代と言えるのかもしれませんが、
そんなときだからこそ誰かの気持ちに寄り添えるものをつくりたいです。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/