フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2022.12.12
街が華やぐ季節になりました。
大聖堂のすぐ横に、毎年冬になると設置される
クラシカルなメリーゴーランドがあります。
小さい子たちが目を輝かせながら順番を待っていて、
自分の番が来たら皆一目散にお気に入りの木馬を選んでいます。
無事に全員が木馬を決めたところで
ゆっくり回転が始まると楽しげな声が響き渡り、
手を振るお母さんたちも嬉しそう。
この冬は深刻な電力不足により街灯のイルミネーションなど
例年より控えめではありますが、メリーゴーランドが
今年も街にやってきてほっとしました。
マルシェ・ド・ノエルのサンタさんのお家には、
週末になるとたくさんの子どもたちが訪ねて来ます。
一緒に写真を撮ったり、お手紙を受け取ったり、お忙しそう。
窓から様子を覗いていたら、君もこっちにおいでなさいと
手招きするサンタさん。
「さすがに遠慮しますー」のジェスチャーをお返ししたところ、
それならそこから撮影しなさいな、とポーズをとってくださいました。
まあ!こちらにまでお気遣いありがとうございます。
気がつくとすっかり日が暮れていました。
キラキラした世界感にいると自分も子どもに戻ったような
気分になりますが、夕飯の買い出しをしてもう帰らないと。
パンデミック前は、大勢の親戚が集まり一日中食べて喋ってが
ソリアノ家のノエルの過ごし方でしたが、それが叶わなくなってからは
それぞれささやかにお祝いをしていました。
そしてこの数年の間に、家族の形態にも変化がありました。
誰よりもノエルを楽しみにしていた義祖父が亡くなり、
その葬儀に大きなお腹を抱えて参列していた親戚に
可愛い赤ちゃんが産まれたのです。
義祖父の話は以前このアトリエだよりにも綴ったことがありました。
彼が子供だった頃、ノエルの朝に靴下の中を見ると
オレンジが入っていたそうです。
今の子に果物を贈ってもがっかりされるだろうけど、
世界中が貧しかったあの頃は兄弟たちと飛び起きて喜んだよ、
というお話です。
毎回必ず同じ話をするので孫たちは「またか」という
顔になりますが、私はこの一連のくだりがとても好きでした。
幼少期の愛された記憶は歳を取ってもずっと覚えているものなんだなと、
あたたかい気持ちになったのです。
今年は久しぶりに皆で集まって食事をする予定です。
もうそこに義祖父はいないけれど、
おそらく誰かがおじいちゃんの思い出話をすることでしょう。
生まれたばかりの赤ちゃんが、おじさん達の話をうんざりしながら
聞く日もいつか来るかもしれません。
この1年もENYOのアトリエだよりを読んでいただき、
ありがとうございました。
あたたかくして良い年末年始をお過ごしください。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/