フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2023.7.20
夏の快晴が続く今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
毎朝、ルーアンと実家のある街の天気予報をチェックすることが
日課ですが、体温みたいな日本の予想気温を見て心配になりました。
最近はあまり真夏に帰国することがないため、あのうだるような
暑さを忘れかけていますが、楽しかった思い出も好物も夏が一番多いように思います。
ビールがトクトク注がれる音、野球中継の声援、セミの鳴き声、
花火が上がる音、心躍るサウンドとともに鮮明に記憶されています。
毎年7月上旬、この地の特産であるリネン農業の促進を目的として
開催されるリネン祭りに、今年も行ってきました。
このお祭りでは、リネン栽培の歴史や製造法が学べる見学会やワークショップ、
生地等製品の販売、そしてアーティストによる作品展示があります。
工場見学は昨年も行ったので、今回はゆっくり作品を見たりビーチで
ピクニックをして過ごしました。
この日はピーカンでとても気持ちがよい1日でしたが、日向はとにかく暑いので、
作品が展示されている教会内がヒンヤリしていて助かりました。
生地や繊維を使ったアートが展示されているので自分の仕事に近いものを
感じることも多く、たくさん刺激を受けました。
18〜19世紀のアンティークキルトを復刻させたコレクションの展示が特に素敵でした。
オリジナルに可能な限り近づけるため、古い生地を使い全て手作業で縫われたそう。
近くで見ると、素朴な作風でありながら巧妙なテクニックが
施されているのがよくわかります。
今は手頃にものが買える便利な時代になりましたが、
長い時間と手間をかけた作品にはやはり敵いません。
時を経ても魅力的に映るだろうと思います。
そういうものを大切にできる価値観を失いたくないです。
別の会場では、アーティストがご自身のお祖母様が
実際に使われていた道具を展示していました。
木製の台に無数に釘が打たれたこちらは、櫛のようにフラックスを梳かして
繊維を取り出すための工具です。
昔は各家庭がそれぞれ使いやすいように道具を作っていたそうで、
形もまちまちなんだとか。
可愛らしいバラの絵が描かれていたのを見て、きっと見た目においても
自分好みに工夫されたんだろうと、当時の方の気持ちがわかったような気がしました。
お弁当を食ようとビーチに向かう途中、フラックス畑にたくさんの
赤い花が咲いているのが見えました。
この花の正体はヒナゲシですが、農薬が散布された土地には
自生しない植物であることから、オーガニック製品のシンボルマークに
使われることがあります。
おそらくこのフラックスも無農薬か、うんと少量の農薬使用に
抑えられているのだと思います。
フラックス栽培はお天道様次第とよくいいますが、農薬だけでなく、
農作物のために水をまいたり水路を引いたりもしません。
雨や太陽が作物を熟してくれるのをただ待ちます。
大胆でおおらかな栽培法だからこそ難しさもあるようですが、
自然と共存するための本来の姿のようにも感じます。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/