フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2023.9.04
皆さんがお住まいの処に郷土菓子はありますか?
私が15年暮らしているルーアンには、この地の特産リンゴを使ったお菓子で、
「アップルシュガー」 というスティック状のキャンディーがあります。
ただ地元の人が日常的に口にするというよりは観光客向けの印象で、
私も知ってはいたけれど食べたことがありませんでした。
近郊の街に工場があると聞き、地域の魅力を再発見すべく
行ってみることにしました。
このキャンディーの起源はなんと16世紀に遡り、ルーアン港に
当時貴重だった砂糖を積んだ船を多く迎えたことに始まります。
やがて土地のリンゴと合わせてアップルシュガーが生まれますが、
当初は喉の痛みを和らげる薬として薬局で販売されたそうです。
懐かしい素朴な味わいのこのお菓子は、今も全て手作業でつくられています。
工場は障がいのある方たちへの職業支援としての一面もあり、
アップルシュガー以外にフランスで古くから愛されている
クマ型のギモーヴなども人気だそうで、
パティシエさんたちが手際よく働いていました。
灯台下暗しとはまさにこのことで、もっと早くから
歴史背景を知っていたらよかった!
お土産に配りたくなる気持ちがよくわかりました。
さて、今日は「知ってはいたけれど……」をもうひとつ。
家庭用品品質表示法 で「 麻 」と表記できるのは
リネン(亜麻)とラミー(苧麻)の2つですが、
ヘンプ(大麻)もまたアサ科の植物から採れる繊維です。
大麻の二文字に内心びっくりしてしまいますが、
ヘンプは繊維利用のために品種改良されたもので、 陶酔作用はありません。
比較的育てやすい植物だそうで、生産地は世界各地にありますが、
近年ノルマンディでも栽培が始まりました。
現在ノルマンディでヘンプ栽培が行われる地域では
元々はてんさい糖の原料であるビートがたくさんつくられていましたが、
大きな製糖所が閉鎖されてしまったことから地域産業を支える
代替えとして見出されたそうです。
リネンの原料 フラックス栽培においてはほとんど農薬が不要ですが、
除草のために微量が使われることもあります。
ヘンプは除草剤も必要なくオーガニック栽培が容易で、
乾燥にも強いためエコロジーな繊維としても注目されています。
以前からヘンプを知ってはいましたが、流通数が少ないためか、
服地にできるような肌触りの生地はお店で見たことがありませんでした。
数日前、来シーズンの生地の買い付けをしていて、
リネンと一緒にオーガニックヘンプ100%の生地を見つけました。
ややネップが多いようですが、触ってみた感じでは
リネンとの違いをさほど感じません。
まずは自分用に何か仕立てて、変化を見ていきたいと思います。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/