フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2024.1.18
新しい年が始まりましたね。
フランスの1月といえば、そう、ガレット・デ・ロワ!
ガレット・デ・ロワはキリスト教の祝日 エピファニー(公現祭)に
食べる伝統菓子で、カスタードとアーモンドクリームを混ぜた
フランジパンとパイ生地でつくります。
元日を除く1月の第一日曜日がエピファニーにあたりますが、
年明けから月末あたりまではパン屋さんやお菓子屋さんに並び、
人と集まる機会がある度に皆でいただくことが多いお菓子です。
シンプルだからこそ個性が出るため、評判のお店のものを食べ比べるのが
この季節の楽しみです。
アーモンドの香りが強いせいか、どうやらフランジパンが苦手という方が
少なくないようで、最近では中身の種類が複数用意されていることもあります。
これも地域性があるのか、ノルマンディでは洋梨とチョコレートの組み合わせか、
林檎ペースト(要するにアップルパイですね)をよく見かけます。
また、このお菓子の大きな特徴として、パイの中にフェーヴという
小さな陶器製のお人形がひとつ隠されています。
これが「当たり」になりますが、切り分けられた自分のパイにフェーヴが
入っていた人は幸福が1年間続くとされ、紙製の王冠を被り皆からお祝いされる、
というところまでがガレット・デ・ロワの儀式です。
運試しともいいますか、新年の風物詩ですね。
最も年齢の若い人がテーブルの下から指示をする等、
配当にもやり方があるようですが、今回は私が入刀した段階で
刃先がコツっと固いものに当たったような音がしました……
よって今年は私が女王です。なんだかごめんなさいね。
何かに使うわけではないけれど、可愛いフェーヴが当たると嬉しいものです。
フェーヴとはそら豆の意味ですが、古代ローマ時代にも
宴会料理の中にそら豆を埋め込んで同じような遊びをしていたそうです。
ただのそら豆だったのが、おそらく少しずつ装飾的になり、
後に陶器製になって様々な工夫を凝らしたものに変わっていったのでしょうね。
もしローマ人が現代のフェーヴを見たらきっと欲しがったことでしょう。
本来なら日本中が晴れやかな気持ちで迎えていたであろう元旦に起こった震災は、
こちらでも大きく報道されています。
悲しい報せを受けた際はいつも、 日常こそ奇跡なんだと改めて痛感させられます。
例え代わり映えのない日々を繰り返すだけの人生だったとしても、です。
私の今日一番のハイライトは、近所の街路樹にヤドリギが
生えているのを見つけたことでした。
以前からよく通る道でしたが、落葉し枝だけになった姿になって
初めて気が付きました。
緑の葉が生い茂った季節には、ヤドリギが見えにくかったのでしょう。
明日が当然来るものだと疑わずに過ごしていると、
その有り難みを忘れてしまうこともありますが、
目の前にあるささやかな喜びを見逃さないように生きていきたいです。
被災された皆さまが一日も早く安心して暮らせる生活を取り戻されますよう、
心よりお祈り申し上げます。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/