フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2024.2.21
つい先日新年を迎えたと思っていたのに、気がつけば2月も後半。
こうしてあっという間に1年が過ぎるのでしょうね。
この冬はノルマンディでは珍しく大雪が降った日もありましたが、
そうでない日はおおむね暖冬のように感じます。
少しづつ柔らかくなった陽を浴びて植物が芽吹き出しました。
春が来るということは、ENYOの納期ももう間もなくです。
今回もここ数年間モデルをお願いしている友人に協力してもらい 、
できあがったばかりのコレクションを撮影しました。
友人はいつも新作に袖を通すのを楽しみにしてくれ、
本来なら私が賄いを用意するべきところ、 ご飯を作って待っていてくれます。
この日はレンズ豆とソーセージの煮込み料理でした。
フランス料理には豆と肉類を煮込んだ料理が多くあります。
有名なものですとカスレという白いんげん豆と塊肉を煮込んだ
一皿がありますが、いずれの料理も入っているお肉の種類は
家庭や地方によって様々だそうです。
友人の煮込みにはソーセージの他にチキンや人参が使われていましたが、
これも特に決まりはなく、有り物でつくると言っていました。
家族が集まる週末になるとよくつくる、フランスのお袋の味なんだとか。
お豆に旨味がぎゅっと染み込んでとっても美味しかったです。
お腹も心も満たされ、撮影に来たのを忘れてしまいそうです。
フランス人の目にはどう映るのか、新作コレクションを見せながら、
一見わからない小さなこだわりについても聞いてもらいました。
ENYOはちょっとのユーモアを大事にしており、クスッとなるシーンを
刺繍のモチーフにすることがありますが、ワンピースの袖口に刺した
ランニングガールズを見て「彼女たちはどこへ向かっているの?」と質問されました。
こうかな?と想像してもらうのが楽しいので、どう思うか聞くと
「女の子達が走るのはきっとセールの初日ね!」と誰もが納得する回答でした。
ボタンについては、ほとんどが蚤の市で探した貝ボタンを付けています。
半袖のワンピースを縫っていた日、窓の外は真っ白な銀世界でした。
これを着る頃はうだるような暑さなんだよなと思うと、なんだか不思議な感じがしました。
雪モチーフを刺繍したら少し涼しく感じるかと思いそうしましたが、
雪の結晶というのは必ず六角形なのだそうです。
ならばボタンも六角形に、とお気に入りのボタンコレクションから選びました。
また別の日、薄いブルーとピンクのまるで紫陽花のような配色のワンピースには
デットストックの透明なボタンを付けました。
雨粒みたいな模様は彫ったところにおそらく手描きで色付けされています。
喜んでもらえるといいな、と思いながらこうした小さなこだわりを
続けていますが、誰よりも私自身がワクワクしたいのだと思います。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/