フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2024.4.24
新緑から差す木漏れ日が心地よい季節になりました。
長く暗い冬を越え、色とりどりにぱーっと開いた花々を見ると、
明るい気持ちになります。
さあ、春です。
時間をかけて準備を進めてきた新作をお披露目する日が、
いよいよもう間もなくとなりました。
(4月27日 (土) より、 リネンバード 二子玉川店にて販売開始致します)
ENYOを始めてから今年で14年になりますが、
未だに発売前のなんとも言えない落ち着きの無さには慣れません。
どれも自信作ですので、皆様のお気に入りを見つけていただけますと
とても嬉しいです。
この4月に新生活を始められた方も多いでしょうか。
実は我が家も動物保護団体から4歳 メスのミックス犬を引き取り、
新しい家族との暮らしをスタートさせました。
虎柄模様なので、「トラ」と名付けました。
日本語のイメージですと男の子のような名前に聞こえますが、
フランス人女性の名前には母音の「a」で終わるものが比較的多いそうで、
夫が言うには女性らしい素敵な響きなのだとか。
(アの音で終わる名前、思いつくところですと ジュリア、クララ、エマ、ニナ、などでしょうか)
私達夫婦には子供がおらず、トラが来るまでは大人二人、
結婚後も独身時代と生活ペースをさほど変えることなく
自由気ままにやってきました。
それが彼女を迎えてから生活は一変、今は二人とも
目の前の命を守ることに必死です。
私は犬がいる家庭で育ったので、いつかフランスでも
犬と一緒に暮らしたいとずっと願っていました。
家族や友人、たくさんの周りの方達の力を借りることで、
それを実現できたことに心から感謝しています。
初めて保護施設を訪れた際、そこにいる多くの動物たちが成犬以上の年齢で、
サイズも大きいことに気がつき、現実を目の当たりにしました。
同じ犬といっても、実家で飼っている子はパピーの頃から成長を見守り、
両腕に抱きかかえられる程の体長ですので、
すでに4歳で身体の大きいトラについてはかなり悩みました。
それでも決めたのは、彼女がとても賢く優しい子だったからです。
新作コレクションを納品し仕事が一段落したタイミングでお迎えをして、
我が家の生活ルールを覚えてもらわなくては、と思っていたのですが、
家に到着し最初にひととおりルームツアーをして以降、
私のアトリエに入ってくることはありません。
それには大変驚きました。
まだまだ教えるべきこともありそうですが、お家の中で入っていい場所、
やってはいけないこと、最低限守ってほしいことはすでに理解をしていました。
仏領ギアナで繋がれっぱなしだったところを保護されたトラは、
フランスの施設にやってきた後、とあるご家庭で引き取られていた過去があります。
ところが、元飼い主の健康問題が理由で再び施設に戻されたそうです。
この聡明さを見れば、その方たちに可愛がられ
しっかり躾けられたのだろうと容易に想像ができますが、
どんな理由であれトラが深く傷ついたことに変わりありません。
大きな身体を擦り寄せお腹を出して甘えてくれる様子からは、
「もう離さないで」と言っているようにも感じ、涙が出そうになります。
愛犬の健康はもちろん、これからは私達自身についても
より一層気をつけ、家族のためにがんばって働こう、と決心しました。
トラのおかげで人生がぐるっと回転し始めたように感じる日々です。
ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/