フランスルーアンの街で服づくりをするデザイナー、
ソリアノ綾佳さんからのお便りをご紹介します。
ルーアンは、パリから電車で1時間ほどの場所にある街。
この街でソリアノさんは自身の目で選んだリネンで服を仕立て、
年に一度リリース。エンベロープでもその作品をご紹介しています。
ソリアノさんについての紹介記事はこちらから »
2015.5.12
過去作品で違った縫製をしているものもありますが、
ENYOでは脇や袖ぐりの縫い代の始末に 「折伏せ縫い」を採用しています。
折伏せ縫いとは、一方の縫い代を包んで片側にステッチをかけて仕上げる、
男性のYシャツなどではお馴染みの縫製方法です。
縫い代の始末は、ロックミシンで縁かがりをする方が早く仕上がりますが、
そうしないことには少し理由があります。
(ロックミシン始末の方が適している場合は使用することがあります)
西アフリカ ガーナで洋裁クラスの先生をしていた頃のことです。
私が受け持っていた学校で生徒たちが使える道具は、
中国製の手回しミシンと炭を入れて使うアイロンだけでした。
ロックミシンはありません。
生地においても、村で手に入るのは薄手のコットンがほとんどです。
生徒たちは決して丁寧とは言えないやり方で洋服を仕上げていましたが、
彼らはほつれたり穴が開けば何度でも直すので、
縫い代が切りっぱなしの状態でもさほど気にしていないようでした。
きちんと始末をすれば、頻繁に修理をしなくとも丈夫に仕立てられるのに。
ここにある道具だけでできる、素材に適した縫製をみんなに知って欲しくて
教えた方法の一つが、折伏せ縫いでした。
地縫いをした後、片方の縫い代をカットして、
もう一方でそれを包みながらアイロンをし、しつけをして、ステッチをかけ…
工程が多いこともあってか、始めは興味を持ってくれたものの、
そのうち面倒になったようで、なかなか続けてもらえませんでした。
生徒には不評でしたが、滞在中に自分で作った洋服には折伏せ縫いをしていました。
フランスに渡り、こうして服作りをしている今も、
着心地や扱いやすさを大切にしているENYOの服には、折伏せ縫いが合っていると考えています。
道具も素材も技術も、何もかもが十分に揃っていないと感じていたガーナ生活でしたが、
そんな状況だったからこそ、様々な工夫ができたのだと思います。
あの頃の経験が、ハンドワークの手間を惜しまないENYOの服作りに繋がっています。
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ENYO ソリアノ綾佳
http://laviedenyo.blogspot.fr/