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17.7.10
《つくり手ファイル》木工作家岡野達也さんインタビュー
あさって7月12日(水)より、木工作家岡野達也さんの作品をご紹介します。蓋を開けた時に広がる木の香り、どの角度から見ても美しい木目、道具が触れた時のコトリとした音、その作品に触れていると木のことが本当に好きで熟知した人がつくったのだと伝わってきます。岡野さんの工房を訪ねてお話を聞きました。
■家具職人の経験を生かして
東京都葛飾区。中学校の前にある工房はギャラリーも兼ねていて、木の取っ手がついた引き戸をあけると、器やトレー、アクセサリーなど様々な作品が並んでいました。機械や道具が並ぶ奥の工房で、岡野さんは日々制作をしています。
岡野さんが木工の世界に入ったのは27歳の時。手に職をつけたかったこと、趣味で家具をつくったのをきっかけにものづくりに興味を持ったことから、文房具メーカーを退職して職業訓練校で学び、その後足立区の木工所で働きます。
「職人の世界で20代後半は遅い方だと思うので、木工所に就職できたのは運が良かったのだと思います。そこで個人邸の収納棚や家具、キッチンカウンター、建具などいろんなことを経験させてもらい、5年勤めて独立しました。独立したての頃は注文家具を手掛ける傍ら、器やアクセサリー、箱物など小物をつくっていたのですが、次第に小さなものの方が中心になっていきました」
■インテリアとして見せたくなる木の道具
今回エンベロープでご紹介するのはソーイングボックス、トレーそして収納箱です。
「全ての基本になっているのが収納箱です。オーバルのシェーカーボックスのパターンで、スクエア型をつくりたくて、収納のためだけでなくインテリアとして飾っておきたくなるものをと考えてつくりました。そこから取っ手をつけてワンハンドルトレーに、さらにソーイングボックスへと発展させたんです」
「ソーイングボックスはヨーロッパのアンティークをモチーフにしたもの。図面はないので試行錯誤しました。側面の取っ手は当時のものにはないのですが、開きやすくするために、そして使っていくうちに生じる歪みを防ぐためにつけました」
ご紹介する作品はいずれもオーク、チェリー、ウォルナット3種類の木を用意。時間とともにそれぞれ風合いが変化していきます。明るいオークは少し飴色に、赤みがかったチェリーはより濃く、重厚感のあるウォールナットは明るく。
時々乾いた布で拭いてあげると艶がでてくるので、育てる楽しみが味わえます。
■どこから見ても美しくあるために
無垢材でつくられた道具は、ものになった後もまるで生きているように、置かれた場所の湿度や温度の影響を受けて変化します。割れたり、反ったまま戻らなくなることもあるので制作するときには、木の性質を見極めた上でつくらないといけません。
「木工の人はみんなやっていることなんですけど、無垢は反るものなので反っても影響がないように組み合わせていきます。例えば木裏(木の中心に近い方)と木表(樹皮に近い方)では反り方が違うので、反る方向に合わせて使う場所を決めます。薄いものほど反るので、蓋や底板には0.2ミリにスライスした無垢を表面に貼った“突板”を使っています」
工房には作品に使う木材が並べられていました。見た目も触り心地もワイルドで、ものになった時の姿と結びつきません。
「どこから見ても美しくあるようにつくっています」と岡野さん。合わせた時に木目がつながるように、仕上げの亜麻煮油ベースの自然塗料は、隅まできれいに拭き取れるように側板と地板を組む前に塗るなど細かい心配りが随所になされています。工房を拝見し、美しく感じさせるシンプルな佇まいは、手がかけられているからなのだとわかりました。
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