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17.11.29
《つくり手ファイル》お守りになるジュエリーを。/装身具LCF 立川博章さん
「装身具LCF」による原石水晶を使った作品は、どれも1点もの。アクセサリーというよりも作家ものの器やヴィンテージの家具に近いものを感じます。大岡山の工房にて、つくり手である立川博章さんにお話を聞きました。
■鎌倉で出合ったシーグラスをきっかけに
天然の石そのものの美しさを大切にしながら、装身具に仕立てる作家立川博章さん。その作品は派手ではないけれど、静かでありながら力強い輝きがあります。
まるで石と会話をするようにものづくりをする立川さんですが、最初から石好きというわけではなかったそうです。
「もともとはインディアンジュエリーが好きだったのでトルコ石は別として、きらきらと透ける石には特に魅力を感じていませんでした」(立川さん)
今の作品づくりに大きなきかっけを与えたのが、鎌倉の海岸で見つけたシーグラスでした。ガラス片が波にもまれていくうちに、角がとれて風合いが出たその姿に美しさを見出したそうです。
値段をつけたら高いものではないけれど、お金では測れない価値があると感じた立川さんはシーグラスを使った作品をつくるようになります。そこから導かれるように、鉱物にも目を向けるようになりました。
鉱物の原石が醸し出す優しくて柔らかい雰囲気。キラキラし過ぎず、身につけた人にそっと寄り添うその佇まいに惹かれていったのだと言います。
■ダイヤモンドにも負けない、水晶ならではの煌き
鉱物の中で特に立川さんを惹きつけるのが、水晶の原石。
「水晶に限定して探しているわけではないのですが、ビビッとくる石は水晶が多いです。実に様々な形や色味があり、どれも個性的。一期一会の出会いにいつもワクワクします。原石の状態なのに、ダイヤモンドにも決して劣らない輝きを放っているのが最大の魅力です」
カット石にはない面白さや美しさ。様々なランクのものを織り交ぜることによる、多彩な表情。
それが原石水晶シリーズのよさなのですが、制作するにあたってその多様性が苦労の種となります。
■制作風景を見せてもらいました
どの石を組み合わせるのか、どの面から見ると美しいのか。作品づくりは、意匠的なことだけでなく安定性も重視しながら全体のデザイン決めからはじまります。
石が一つ一つ異なるので、デザインもそれぞれ考えなければなりません。
配置が決まったら、不揃いの石一つ一つに合わせた枠づくり。枠に銀を流し、石留めをして完成なのですが、制作途中に一つでも枠や石が割れてしまったら全てが台無しに。
石を固定するための爪や粒をつける際にも、取ったり外したりするのでとにかく緊張の連続です。
「冗談半分で真似されたらどうするって聞いたら、誰もやらないだろうって。手間がかかることや量産できないことなどを考えると、デメリットの方が大きいのかもしれませんね」(文子さん)
■あなたのために。パーソナルなジュエリー
LCFの装身具が基本的に一点ものである理由、それはショップを構えていることにも関係しています。
「展示会をやらないとか、1点ものだけというのはジュエリー業界ではイレギュラーみたいで食べていけるの?ってよく聞かれます。でもうちは、お店というかたちをとっているので、前回来ていただいた時と同じものが並んでいるよりかは、新しいものが並んでいるほうが僕も楽しいし、お客さんも楽しみに来てくださるので自然とこういう形態になりました」
大量生産ではなく、唯一無二のジュエリーはパーソナルなもの。身につける人にとって、ともに年を重ねていく相棒のような存在になるのではないでしょうか。
立川さんは自らのものづくりについてこう話します。
「お守りのように、いつもつけてもらえるものがつくれたらと思っています。末永く大切にしてもらえたらとてもうれしいです」
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