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22.12.19

スロバキアの空気を纏う、NOVESTAの風合いあるスニーカー/ クラインシュタイン小石祐介さん、小石ミキさん

中央ヨーロッパの東に位置するスロバキア。そのスロバキアでは誰もが知っている、NOVESTA(ノヴェスタ)のスニーカーを日本に伝えるクラインシュタインの小石祐介さんと小石ミキさん。そのわけやNOVESTAの魅力を聞きました。

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■出会いは他言語で検索

NOVESTAと小石祐介さんの出会いはインターネット。当時、小石さんはファッションブランド、コムデギャルソンに勤めていて、スニーカー工場を探していたなかで出会ったのがNOVESTAだったのだそう。

▲話をうかがいに南青山にある、クラインシュタインのギャラリー「STEIN BOX」へ
▲小石祐介さん

「2010年の冬くらいですかね。面白いスニーカーブランドや工場を探していて、英語やフランス語で検索してもなかなか出てこないので、ロシア語、チェコ語などでグーグル検索してリサーチをしていたんです。

英語で検索しても出てくる情報って大体メインストリームの情報しか出てこないのですよね。他にもいろんな言語で調べると、時々まだ見つかっていないものが出てくることがある。

リサーチの過程でNOVESTAを見つけて、ここちょっと面白いかなと思ったのが最初の出会いです」

▲スロバキア中西部に位置するNOVESTAの工場

「メジャーなスニーカーブランド、いわゆる西側のブランドとは既にいろいろなところと仕事をしたり、見ていたりしたんですが、きれいなスニーカーが多くてどこも似ているんです。当時は独特の風合いがあるスニーカーを探していました。

NOVESTAは西側の感性とは違う新鮮なものでしたね。手でつくっていてパーツの部分的にもゆがみが一つ一つあり、そういった風合いが残るデザインでした。といってもNOVESTAのウェブサイトは当時はていをなしていなくて情報も少なかったので、スロバキアに出張しに行ったんです」

▲代表モデルSTAR MASTERの仕上げ風景

「現地に行くと、昔のアーカイブ記録がたくさんあって、ヨーロッパブランドのOEMも経験豊富な工場だということがわかりました。デザインや技術も含め、面白いものをたくさんつくっていてこれだったら何か企画できそうだなと。

首都のプラチスラバから工場のあるパルチザンスケという小さな街にオーナーの車でドライブしたのですが、その間に歴史の話だったり色々な話が盛り上がって意気投合したのも大きかったですね。一緒に仕事ができそうだな、と思いました」

■はじめはブランドの立て直し

コムデギャルソンとのコラボレーションによってNOVESTAは一気に注目を集めました。

NOVASTAと小石さんの距離はいったん離れますが、小石さんがクラインシュタインを設立し独立した後の2015年、今の代表となるイゴールさんの要望に応じてふたりはNOVESTAのディレクションを手がけることになります。

「業界の中でNOVESTAというスニーカーブランドが広まった後、世界中からNOVESTAにコラボレーションの依頼や販売希望の店舗が増えたのですが、ブランド側でブランドイメージを意識してその動きを監督することが当時は難しかったんです。

どこでも買えるものになってしまったり、イメージが混沌としてしまうとどういうブランドなのか伝えることもできなくなる。どうリブランディングしたらいいか、代表のイゴールと話し合いました。

ブランドイメージを作り直す過程で、実際にNOVESTAのスニーカーを履いてもらいたい人のイメージを考え、日本で展示会を始めました。戦略をしっかり話すことができるセールスのチームには恵まれました」

▲1970年代~1994年のドイツ軍で実際に採用されていたトレーニングシューズ「ジャーマントレーナー」(左)。色々なブランドがこの靴の原型を用いてつくっているが、NOVESTAのものはチェコ・スロバキア時代に実際に工場で制作されていたものを元に改良したもの。右は「MARATHON CLASSIC(ホワイト)」
▲1986年ソウル・オリンピックに出場するアスリートからの依頼を受けて開発されたMARATHON CLASSIC。 工場のアーカイブから残るマラソンシューズを2014年に改良し復刻。年々見えない箇所でディティールを改良している

■歴史的な工業地区の、とある工場から生まれたNOVESTA

ここで小石さんが出会う前のNOVESTAについて少し振り返ります。

NOVESTAは1939年、もともと旧チェコスロバキアにある工場のひとつがNOVESTAという名称で自社ブランドをスタートしました。

チェコ・スロバキア時代にバタという財閥が、旧チェコスロバキアにあるパルチザンスケという町に工場を設立。そこではスニーカーのほかに長靴、工業用ゴムなどがつくられ、東西冷戦時代もありながらもずっと製造業は続いていました。

「消防用の長靴、安全靴みたいなものからタイヤメーカーのためのゴム製品もつくっています。スニーカーはいろんなOEMを受けています」

■スロバキアの美意識、ユーモア、誇るべきもの

現在、スロバキアのNOVESTAのスタッフと連携しながら日本国内への展開だけでなく世界各国に向けたNOVESTAのクリエイティブディレクションを行っているクラインシュタイン。それは旧チェコスロバキア時代の歴史とともにあるNOVESTAの背景を伝えながら、スロバキアのものづくり文化を抽出する作業にもなっているよう。

「スロバキアは中央ヨーロッパに位置します。中央ヨーロッパのウィーンとハンガリーに接している一方で、東はウクライナに接しています。冷戦時代は東寄りの政治的影響を強く受けています。

首都プラチスラバは18世紀のハンガリー帝国時代に女帝のマリア・テレジアが住んでいた場所です。地方都市にも古いヨーロッパ文化の空気が漂っていながら社会主義時代の空気も少し漂う。複雑なアイデンティティを抱えています。プライドがありながらも、フランスやドイツのような西ヨーロッパに対する政治的なコンプレックスも感じられます」

「ブランディングの仕事を始めた頃、スロバキア色をどこまで出していいかNOVESTAは悩んでいました。私たち二人はスロバキア色を前面に出した方がいいと議論をしました。スロバキアやチェコには優れたプロダクトデザイン、グラフィックや、現代建築がたくさんあります。

そういったチェコ・スロバキア一帯の現代のデザインカルチャーを反映したプロダクトがNOVESTAのスニーカーであるという打ち出しを進めていきました。オーナーのイゴールがクリエイティブについてしっかり話し合える人だったというのもブランドにとっての幸運だったと思います」

「NOVESTAはあえてロゴを全面に出していません。その全体の風合い、雰囲気こそがNOVESTAのアイデンティティだからです。この考え方を伝えるにあたってスロバキアの美意識、ユーモアを表現できるものを探していました。その過程で見つけたのがスロバキア出身の写真家、マ―ティン・コラーでした」

▲マ―ティン・コラー氏による撮影のシーズンビジュアル

「マ―ティンは現代的で、風刺の入った面白い作品を東欧で撮っています。NOVESTAのシーズンビジュアルではスニーカーをあえて使わず、スロバキアの空気を伝える風景の写真を伝えていこうということで一緒にビジュアルづくりをしています」

ほかにもアンディ・ウォーホルの両親がチェコスロバキア出身で、街にはアンディ・ウォーホルの銅像があったりするそう。デザインの歴史でいうと、言語化されていないものがまだまだスロバキアにはあると小石さんは言います。

■玄人的なスニーカー好きへ。はじめてのスニーカーを探す人へ

NOVESTAが大切にしているのはスロバキアらしさに立ち返ること。そんなスロバキアの空気を纏うスニーカーをどんな人に向けてつくっているのでしょう。

「玄人っぽい人、そして同時にはじめてスニーカーを履く人にも届けたいと思っています。NOVESTAはスニーカーをたくさん履いてきた人も、あえてこのブランドを選ぶ選択肢を提示する、独特の風合いを持つスニーカーです」

▲牛革とファスナータイプの組み合わせによって、かたちがコロンとしている「ITOH VELCRO」

「ハンドメイドの魅力が分かる人、これまで革靴やヒールを履いてきた人が初めてスニーカーを履く場合にも満足させることができると思っています。

服の色を邪魔しないので合わせやすく、さりげなくもスニーカーはスニーカーで主張しているところがあるんです。アノニマス(匿名)なスニーカーにもなれるし、スニーカー自体に存在感があるので取り入れやすいと思います」

▲取材の最後、おふたりに足元を撮影させてもらいました。小石祐介さんが履いているのはスロバキアの国旗カラーを反映したマラソンクラシック
▲こちらはクラインシュラインの小石ミキさん。オールブラックのコーディネートにピンクルージュのマラソンが映えます

写真提供 クラインシュタイン :3~8、11~20枚目

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カテゴリ:つくり手ファイル

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