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23.10.17
《つくり手ファイル》自然の風景のように移りゆく、真鍮の装身具/BRASSYARD山中育恵さん
時とともに変化する真鍮の作品を手掛ける、BRASSYARD。心に留まった自然の風景を宿した装身具は、身につける人とともに育ちます。10月20日(金)からの販売会に先立ち、つくり手である山中育恵さんをご紹介します。
■真鍮ならではの風合いに惹かれて
BRASSYARDの装身具には、儚さの中にも凛とした力強さがあります。
ブランド名にも掲げられているように、その素材は真鍮。経年変化の大きな金属です。
そんな真鍮について、つくり手の山中育恵さんはこんな風に語ります。
「アクセサリー工房で働いていた時にアルミ、銅、真鍮を扱っていたのですが、時間の経過とともに深みの増す真鍮独特の風合いに惹かれました。
真鍮は、昔から仏具や家具の取手など日本人に馴染み深い金属。濁りを帯びた光が柔らかく、日本人の肌にもよく合うと思います」
初めて身につけた時の黄金色の輝きは、やがて空気に触れ人の肌に触れ、光沢が落ち着き深い色に変化していきます。
BRASSYARDがつくるのは「着ける人とともに時を過ごしそれぞれの美を纏ってゆく」装身具。「その方のお好みに育てていただけると嬉しいです」と山中さんはいいます。
■装いに馴染む装身具
ものづくりに携わる前は、洋服の仕事をしていた山中さん。
「服飾の専門学校を卒業後、地元三重で販売員として働いていましたが昔からつくることが好きで、つくる仕事がしたいと京都に出ました。
偶然見つけた仕事がアクセサリー工房で、そこで基礎を学びました。その後もアパレル関係など様々な仕事を経て、2015年にBRASSYARDを立ち上げました」
そうした背景もあってか、BRASSYARDのアクセサリーはそれだけが主張することなく、装いに自然になじみます。重ね付けをしたり、複数身につけてもお互い寄り添うように調和。その日のスタイルを特別なものに仕上げてくれます。
有機的なものをそぎ落としたシンプルさと有機的な雰囲気が同居したデザインは、どんな装いにもフィット。
一日のはじまりに身につけることが当たり前になるような、相棒のような存在になりそうです。
■心に留まるものを手繰り寄せるようにかたちに
「作品によって鍛金もあれば一部、鋳造で制作しているものもあります。どちらも自分の手を介すので、自身の精神性や美しいと思うバランスなど心のありようが作品の空気感をつくると思っています。
つくることは生活の一部なので、できるだけ日々心穏やかに心地よく暮らす事を大切にしています」
「暮らしとものづくりは地続き」そう話す山中さん。この夏から自然豊かな新しい拠点での活動がスタートしました。
「緑を見ながら制作をし、湧水を汲んで生活がしたいと思い、この地を選びました。庭からの風が気持ちよく、ここで暮らせる事の喜びを感じています」
最後に、インスピレーションが生まれる瞬間について、そしてエンベロープで紹介する作品についてうかがいました。
「美しいと感じたり、ふと心に留まる何かから手繰り寄せるようにかたちにしています。それは自然や風景から得ることが多いです。
新しい作品は、水の流れや水面に映る月など、水からイメージして制作しました。同素材に捉われず、つけてくださる方の感覚で流動的に組み合わせていただけると幸いです」
新作のデザインの源となった、透明でかたちのない「水」。流れに身をまかせて刻々と変化する姿を、装身具に落とし込んでいます。
今回は真鍮だけでなく新たな試みである銀素材も登場。
やわらかな光と趣のある影を宿した銀の装身具もまた、自然の風景を思わせる味わいがあります。ぜひ真鍮との共鳴をお楽しみください。
写真提供:BRASSYARD(2、3、5、6、7、8枚目)
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