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掲載日:19.08.30

《つくり手ファイル》手だから生まれる心地よさ/犬飼眼鏡枠 犬飼厚仁さん

「犬飼眼鏡枠」の眼鏡フレームは、デザインから製作までひとりでつくられています。二子玉川shedで9月からはじまる展示受注会の前に、長野県松本市にある犬飼さんの工房でお話を伺いました。

■大切な道具、本当は気になること

多くの人にとって、身体の一部のような存在の「眼鏡」。自分自身と同じくらい大切に考えたい道具のひとつなのではないでしょうか。

似合うかどうかはもちろんのこと、本当は気になる「どんな人がつくったか」「かけ心地は合っているのか」…。そうしたモヤモヤは、犬飼厚仁さんが手がけるフレームに一度ふれてみると、もしかしたら解決するかもしれません。

主張の少ないフラットなデザイン、手仕事でしか生まれない曲線。かけ心地に合わせて、つるの幅や鼻あての位置を調整してくれるセミオーダー式。

「犬飼眼鏡枠」は、犬飼さんひとりでデザインから製作まで行っているからこそ、できることがたくさんあるのです。

■はじめから終わりまでひとりでつくる

ひとりで一貫してフレームづくりをする、とはどういうことなんだろう。

長野県松本市にある犬飼さんの工房を訪ねると、そこには予想外の光景が広がっていました。

▲川沿いの水色の建物が、犬飼さんの工房です

広々とした倉庫のような建物に、20台ほど並んだ専門機。大きいものは、両手を伸ばしても収まらない程のサイズです。

こんなにたくさんの機械をひとりで操っているんだと、犬飼さんのもつ幅広い知識と技術力をさっそく目の当たりにしたようでした。


「本来、眼鏡づくりの世界はほとんどが分業制。削る会社、磨く会社…と細かく分かれているけれど、それを全部ひとりで一貫してやっているのが『犬飼眼鏡枠』の強みです」

そう言いながら大きな機械を動かして、眼鏡フレーム製作工程の一部を見せてくれました。

▲フレームになる前の、板状の樹脂の表面を薄く削るための機械
▲フレームの表面を磨くための機械。鉄の塊のようにどっしり
▲ほとんどの機械は30~50年前の中古のもの。近年の軽量化された機械は、ちょっとしたことでずれが生じてキレイに仕上がらないそう

「機械が得意なことは機械、手でしかできないことは手で」というのが犬飼さんの考え方。

さまざまな機械を駆使してパーツをつくったら、次は何本ものヤスリと刃を使って、自らの手で削いでいきます。

▲ 先に丸みをつけ、裏面は薄く、耳に当たる部分はカーブを強めて…

犬飼さんの手で意識的に削られたフレームは、触れるとやわらかさを感じる、植物のように有機的なかたちに。

これこそが、機械が削る一定した厚み・丸みのフレームでは味わえない“心地よさ”につながっています。

▲削る前のつる(奥)と比べると、つい撫でてみたくなります

■いい、わるいがシンプルにわかるものづくり

犬飼さんは学生の頃アートを学びながらも、将来はアーティストではなく、良し悪しがもっとシンプルに判断できるような、身近な道具をつくって生きたいと考えていました。

そんな犬飼さんにとって、眼鏡は学生時代からの必需品。工業製品だと思っていたけれど、人の手でつくることができると知り、眼鏡づくりの世界へ飛び込みます。

眼鏡フレームの産地・福井県鯖江市に移住し、さまざまな会社で眼鏡づくりを経験。 8年かけてデザインから製作までこなせるようになり、これからは自分で考えてやっていこうと、地元・松本での独立を決心しました。

「最後に勤めた会社に、腕のいい専門の職人たちが集まっていて。その人たちの仕事を見られたことが独立の良いきっかけになりました。

腕のいい人ほど自分で考えて行動していて、それが独自のノウハウになっている。そういうレベルの高いものづくりを知り、自分もそこまでのことをやろうと、今に至っています」

■「自分らしさ」意識しないことで生まれる個性

「犬飼眼鏡枠」は今年で4年目。何度かデザインをリニューアルし、現在では10型のフレームがあります。

そのすべてに共通するのは「自然と馴染むフラットさ」。シンプルで主張の少ないデザインは、なんでもないようで「ありそうでない」ものばかりです。

▲1型につき5色展開。別の色も特注でつくることができます(追加料金あり)

「はじめ1~2年は、他人とは違うものをつくりたいという意識が強く、個性的なデザインをしていました。でもだんだん、その主張がうるさく思えてきて」


「たとえば、いろんな料理人が同じレシピで料理したとして、全く同じものはできあがらないはず。

フレームだって、シンプルなデザインでも、はじめから終わりまで自分の手でつくるというだけで十分個性が出るのではないか、ということに気がつきました」

■黒縁が苦手なみなさまへ、新作が生まれます

そんな犬飼さんが、二子玉川shedでの受注会のために新作フレームを考えてくれることになりました。

お願いしているのは、shedのお客様に合う、おだやかな印象のデザイン。黒縁が苦手という女性もかけやすいようなフレームをリクエストしました。

▲色とりどりのドライフラワーが溢れる作業場で、デザインを考えてくれています

「少しひきしまった、凛とした雰囲気がでるといいな…」と見せてくれたラフは、まさしくこれが欲しかった!と言いたくなるようなデザインでした。

「全体のバランスは丸眼鏡だけど、形はボストン型。丸眼鏡よりも癖がなく、かけやすいと思います。案外いままでになかった、よいものができそうです」

普段は男女両用のデザインですが、今回の新作は、女性の顔にぴったりくるような、小ぶりなバランスでつくってくれる予定です。

とても楽しみな新作のお披露目は、9月28日(土)から二子玉川shedで始まる「犬飼眼鏡枠 展示受注会」にて。

みなさまもぜひ、お気に入りの服を着て、犬飼さんの眼鏡を選びにきてくださいね。

犬飼眼鏡枠 展示受注会

2019年9月28日(土)~9月30日(月)
11:00-19:00(最終日は17:00まで)
shed(東急田園都市線、大井町線二子玉川駅から徒歩約3分)

カテゴリ:shed, つくり手ファイル

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