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2024.10.18
人生に向き合う中で、見つけたセルフケア。「自分の内側が何を望んでいるのか、ひとつずつ向き合う」/fragrance yes 山野辺喜子さん
自愛にフォーカスした企画「何もしない休息」がスタート。そこで期間限定でご紹介しているのが、fragrance yesのセルフケアプロダクト。
アトピー性皮膚炎に悩まされた経験から植物療法を勉強し、ワークショップやアロマプロダクトづくりを行う、山野辺喜子(よしこ)さん。かねてよりエンベロープスタッフがファンだった山野辺さんに「心身を癒す」ことの大切さをうかがうと、実体験をもとに語りかけてくれました。
■肌に使うものを変えること、食べるものを変えること、心を変えること
「人の運命を決定するのは、その人が自分自身をいかに理解しているのかということである」。こんな言葉を残したのは、森の生活を実践したアメリカの思想家ヘンリー・デイヴィット・ソロー。
fragrance yes の山野辺さんも「自分を理解し向き合うこと」で得られたことを、時折うっすらと涙を浮かべながらやさしく話します。
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「セラピストの仕事に就くきっかけは、20代前半に福島から東京に出てきて、もともと持っていたアトピーが悪化してしまったことでした。
皮膚科でステロイドを処方されてビタミン剤をもらって、保険外治療でアトピーの黒ずんだ肌を治していくみたいなことをするんですけど、通ってもよくならないことをくり返してきたときに、たまたまある整体の先生に出会ったのです」
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「その先生は、アトピーは病院に通っても、お薬を塗っても治らない。肌に使うものを変えること、食べるものを変えること、心を変えること、その3つが大事だと教えてくれたんですね。
ただ当時の私はそれを言われても、どういうことをすればいいのか分かりませんでした。なので、先生の弟子となって整体を学びながら自然療法を勉強し始めたという経緯があります」
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■偶然の整体師との出会いが人生の転機に
「師匠は子どもの頃から心臓病と高血圧の持病があった方でした。長年、薬を飲んでいて薬害にもあった方だったので、彼女も自身をケアするために食事療法や体質改善をやられていたので深い知識がありました」
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自分が先生の状況と重なることころがあった、と山野辺さん。しかし炎症を抑えるステロイド剤を一気にやめるのは、想像をこえる茨の道でした。
「ステロイド剤やめると、わ~っと湿疹が出てくるんですけど、それがもう大変でした。ただ今まで、同じ対処をしてきて体質が変わらなかったというのもよくわかってきているので、どんなにつらくても食事療法、体質改善を信じてみようと思って、ステロイドを使わない生活を続けました」
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急に出てしまった炎症は痛くて痒くヒリヒリします。腫れあがって、どう炎症を抑えていいかという状況。
「アトピーのときは、とにかくどうにかしたいんです。ほかにあと何の効果があるの?痒みを抑える植物は他に何があるの?調べると心がラクになる、そういう状態でした。自分が困っていて、自分を救うために目の前にあったのがハーブの力でした」
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「たとえばカモミールには抗炎症作用があるので、煮出して冷蔵庫で冷やした後に、指を浸けたりパックをしたりして鎮静させます。バラにも抗炎症作用があるのを知って、バラのお水をお化粧水代わりにして使って、それだけだと乾燥して痒くなるので、保湿のために油とみつろうを使ってバームをつくることをしました。
油とみつろうだけだと、ただの保湿になるので、そこにまたカモミールを入れて痒みを軽減すること、ティートリーを入れて殺菌効果を狙うなど、お薬代わりにハーブを使っていました」
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「ハーブは水溶性なので香りが強くありませんが、アロマ精油になると植物の芳香成分の原油を抽出して使うため、ハーブよりも50倍くらい高くなります。
痒みがひどいときは高濃度で使いたかったのですが、種類によってはダイレクトに嗅ぐとウッてなるようなものもあり、痒みが酷いときは一日じゅう身に纏う。特に寝るときは痒くなりやすいので強いなあと思いながら寝たことも。
そのときテストした経験が今の仕事にもつながっています。香りのバランスは、自分なりにいちばん心地よいものにしたいと思っていたので」
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「植物療法の効き方は個人差があります。気をつけなくてはいけないところは、自然であるから絶対安心ではなくて植物はすごいエネルギーを持っています。お薬にもなれば毒にもなる。私の場合は幸い植物アレルギーはなく日常で取り入れることができました」
■香りを通じて心を開く。自分の心の部分と向き合うことからケアがはじまる
山野辺さんが自分の気持ちと向き合い、自然療法を続ける時間は、アトピーの鎮静化以外の心の部分でも大きな変化がありました。それは「向き合う習慣」から生まれたことでした。
「何年もかけて、やっと肌が落ち着いてきた頃に、ちょっと自分の心も変わってきたんですね。信じてみたら、本当にできたんだ!って、自信にもつながってそれがうれしかったんです」
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「それから自分の体験をシェアしていけたらいいなと、クリームづくりのワークショップを始めました。外で手に入れた把握していない成分のものを使うよりも、自分でつくれたら成分構成が分かるし、手軽だと考えたんですね。
私がしたことで、その人たちのセルフケアに繋がっていくことを知って使命感のようなものを感じて、自分が植物療法に救われたので、困っている人たちに発信していきたいという考えになりました」
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■自分を「知る」ということ「気づく」こと
身体の仕組みやハーブの力、香りの性質を学んだ山野辺さん。日々、暮らしの中では自分をケアするために、どんなことを大切にしているのでしょう。
「私は日々、自分の気持ちと向き合っています。例えば、予定の立て方もそうですし、仕事の仕方もなんです。
10年くらいyesの活動をやってきて、最初の5年くらいは食べていくのも大変でしたし、自分の時間なんてまったくないくらいの暮らしをしていて、がむしゃらにやってきました。
あとの5年も、ビジネスについて得意ではなかったので時間がかかることばかりだし、悩むし、自己嫌悪になったり、自分を責めちゃったり、いらない感情がいっぱいくっついてくるわけです」
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「うまくいかないと、私これでいいのかな?って、本当に毎日、自分と向き合っているんですが、日々のここがいいな、と思うのは、ちゃんと自分の思いと正面から向き合っていることだと思うんです。
自分と逃げないでいる。やっぱりそうすると、ゆっくり時間をかけつつではありますが一個ずつ確実に成長できるんです」
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■伝えたいのはインナーケアの大切さ。脳と直結した嗅覚のこと
「大切なのはインナーケア。具体的にはまず自分を知ること、気づくことがないとその先がない」と山野辺さんは話します。変わりたいとか心のケアしたい願望を叶えるには、まず一回自分と向き合うのが大切なんだそう。
「人ってどうしても最初は外側を見がちじゃないですか。たとえば、食べるものも、化粧品も、パッケージがいいからって買ったりだとか。雑誌などに写る情報を取り入れることもそうです」
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「自分の心と、そんなに向き合えていない場合があります。毎日の暮らしの流れがあるから、それに乗っ取って向かっているだけなところがあります。本当に自分が心地いいしたいことなのか。心を置いていかれてないの?と、向き合っていくのが大事です。
向き合う時間がとれないで生活していると、はっと気付いたときに病気になってしまったり、そういうところに行き着いてしまうと思うんです」
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ハーブは香りを放ち、それによって副交感神経が優位に。香りを選ぶことは自分に必要なものを選ぶことにつながっていきます。
「嗅覚は本能で、嗅覚だけ五感の中で唯一脳と直結しています。余分なものを身体に要れないよう、嗅覚で嗅ぎ分けられるいわれていて、アロマで心地よいと感じたものは今必要なものなんです。
カウンセリングするときやワークショップでは、香りを通じて、あとは私との会話を通じて気持ちを吐き出してもらうんです。そうすると、ご自身で最終的にどうしたらいいか気づかれていきます。私はその方に、お守りみたいに寄り添う香りをつくっていきます」
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■必要なのは、立ち止まって自分をみつめる時間
流れゆく時のなかで、正直になって自分の気持ちをみつめてみる。そして暮らしのなかに五感を解放する香りを添えてみる。山野辺さんが伝える Well-being への一歩は、誰もが手軽に始められるものでした。
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「ちゃんと食べるものを選んでいるかな?ちゃんと肌に使うものを選んでいるかな?自分の心と向き合っているかな? 立ち止まったときにちゃんとyesって言えるような暮らしをしているか、そのことの大切さに気づいてもらえたらいいなと思います」
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「今やっていることが、全部、私の生き方を反映しています。自分を理解し向き合うことで面白い人生になっていると思います。冒険ですね」
カテゴリ:つくり手ファイル
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