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24.0202

雑誌『暮しの手帖』についておしゃべり。私たちが面白かった暮らしの記事

「エンベロープの本屋さん」は、スマホやSNSとちょっと距離を置き、私たちの暮らしを取り戻さなくちゃ……とはじまった企画です。

そこで読んでみたのは1970~1980年代の『暮しの手帖』。どんな記事があったのでしょうか。令和の今、スタッフ4人が昭和時代の雑誌を読んで語り合いました。

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■懐かしき時代の暮しの手帖、読んでみてどうだった?

にしむら「まず、表紙自体に中身の情報がないのが新鮮だった。だから、どれを読むのか最初に表紙から選んでいった感じです」

みやした「たしかに、この時代は絵だけで勝負している感じですよね」

わたなべ(ち)「現在の『暮しの手帖』は表紙に内容を反映したデザインですよね。昔はそもそも雑誌のつくり方が全然違うし、イラストの捉え方とかも全然違うと思った。切り貼りでデザインしているんじゃないかな」

▲エンベロープスタッフ4人のなか、わたなべだけ『暮しの手帖』をたまに購読していました

みやした「雑誌のデザインからも時代がみえるよね。中はけっこう文字がぎっしりなのに表に出さないという。当時は情報が貴重だったんだろうね」

わたなべ(ち)「うん、読むのを楽しみにするよね」

にしむら「そもそも購読することが主流な感じがする」

わたなべ(あ)「購読する人多そう」

みやした「どの号が好きでした?古い号から順に紹介していきましょうか」

■スタッフそれぞれの好きな号を紹介します

家の施工レポートとスコットランドのタータンに一目惚れ(1971年14号)

みやした「私は『一週間で建った家』というタイトルの記事を見つけて、思わず気になって惹かれてしまった。

この家が一週間で建つの?って。勝手に建築ロマンの話かと思って読んでみたら、ある建築メーカーが考案した住宅建築の提案話だったんですよね」

みやした「家の見た目から木がふんだんに使われていて、最近建った家って言われてもおかしくないような外観。あぜくら工法といって、割り箸で井の字に交互に積み重ねて壁をつくるような柱がない建築の方法なんですよね。

その家が建つ様子を編集部がレポートしていて、この家だったら基礎を除けば説明書でもあればつくれそうな感じであるって書いてあった。だから頑張ればIKEAの家具みたいにつくれるのかなって」

にしむら「これは誰が建てているんですか?」

みやした「建てたのは大工さん。その様子を丁寧にレポートしているんですよね」

みやした「読んだあと自ら家をつくることも考えさせられる記事でした。話しは違うけど、ほかの号でもカヌーをつくろうとか寝台をつくろうとか、そういう実用の記事が多くて気になった」

わたなべ(ち)「私も椅子をつくろうってページをみつけた。図版も一緒にのっているやつ」

にしむら「鏡台もつくれるよ!みたいなのもありました」

みやした「もう一つ、この号ではスコットランドのタータンチェックの記事が載っていて素敵でした」

みやした「風土や歴史の話とともにスコットランドのチェックが42種類も紹介されていて、スコットランドの人は美しい色の感覚を持っていると書かれていた。木の実を潰して糸を染色していくみたい」

ポルトガル旅行で見たタイルに古雑誌で遭遇(1973年27号)

にしむら「私はポルトガルのタイルが載っている27号を選びました。

ポルトガルに行ったことがあって、そのときもタイルの写真ばかり撮っていたんですけど、公共のトンネルや民家や階段などどこにでもタイルが使われていて。しかもいいなと思った表紙を選んだら、この記事がちょうど出てきたんです」

にしむら「他のページは文字が多いのにこれは写真をみせるような企画になっていて20ページもある。旅したのは2018年とか2019年で、これは1973年の号だけど現地て見た柄と似たタイルも載っていて」

みやした「きれい。この記事みて、当時の人はどういうふうに暮らしていたんだろう」

わたなべ(ち)「スコットランドのチェックと同じで文化を知ることができる記事だよね」

にしむら「飾りというより実用って書いてある。壁に掲げたら油絵代わり、洗えばきれいになる。あと涼し気って」

わたなべ(あ)「今だったら家つくる人はピンタレストで保存するけど、そういうのがないときに、これは参考になると思う。情報がなかった時代だから」

にしむら「あとは読み進めていたら……毎月違う人が自分の私服を紹介していくみたいなページがあるじゃないですか。それがたまたまウェールズ地方出身のモデルさんで」

わたなべ(あ)「あのウェルシュブランケットの」*エンベロープではウェルシュブランケット・マーケットを開催しています

わたなべ(ち)「ウェルシュじゃ~ん」

にしむら「そう、ウェルシュだと思って。私の故郷ウェールズ地方は寒いからって書いてあった」

わたなべ(あ)「私の故郷では毛織物が盛んでって書いてある?」

にしむら「そこまでは書いてなかった(笑)」

わたなべ(ち)「日本に住んでいる外国人を取材したのかな?」

わたなべ(あ)「そうだと思う。私が読んだやつも週末は夫と東京を散歩しますっていうゴージャスな外国人だった」

信頼に値するテスト記事に心打たれました1974年32号

わたなべ(ち)「私は編集者でありデザイナーである花森さんがやっぱり好きで、そして大橋鎭子さんの半生を描こうとした『とと姉ちゃん』も見てたんですよね。

戦争が終わって一回生活のものがすべてなくなっちゃったところから、暮らしをもう一度取り戻そうってなったときのドラマで描かれた内容がまさにここにあって面白かった。

花森安治さんはただのデザイナーだと思っていたけどジャーナリズムだとか探求心に溢れている人だってわかって」

わたなべ(ち)「私が読んだ号は子どもにとって運動靴がいかに大事かっていうテーマで、メーカーごとにどれだけ消耗するかって実際に300人の子どもがテストしたって話が本当に面白かった。

お母さんと子どものやりとりまで載っていて『もうこの靴やめたい』って子どもがいうんですよ。でも『これは人のためになる実験だから!』って文句をいいながらも、ぼろぼろになるまで靴を履かせて実験をしたって……」

わたなべ(ち)「コピーも、見るも無残に色あせた靴って書いてあったり……」

みやした「花森安治さんと大橋鎭子さんが実際に編集していた号だよね」

わたなべ(ち)「そう、名前が載っている」

わたなべ(ち)「あと、目次は中身が出来てからつくるから、こうやって挟んでいるんだなって、デザインも納得だった」

にしむら「つくり手目線で見ているんですね」

・社会にもの申す姿勢を感じられます(1983年83号

わたなべ(あ)「私はみんなが70年代だったので80年代にしたんですが、うちのお母さんが暮しの手帖の料理本『おそうざいふう外国料理』を持っていて本棚にあったから、このページみたときに料理ページのつくり方の表記が懐かしかったです」

わたなべ(あ)「昔の本のレシピって長いんだけど、凝ったレシピをつくっているから長いと思っていたらそうじゃなくて、丁寧につくり方を紹介しているからってことに気づきまして。

1つのプロセスのレシピにアドバイスまで書かれているんですよね。たとえば『ブランデーの含んでいるアルコール分をとばします。もちろんマッチを擦って火をつけてもけっこうです』と」

みやした「もちろんマッチを~って、味がある」

わたなべ(あ)「『この辺で海老が硬くなってきますから、えびだけ先に引き上げます』とか、すごく面倒みてくれる」

みやした「みるってよりも読むって感じなんですね」

わたなべ(あ)「あと巻頭の記事の『夜10時までの保育園』で、社会にもの申すっていう姿勢が感じられて……

夜間保育がなくて、でも父子家庭の人とか母子家庭の人とか、困っちゃう人とかいて、見るに見かねてお寺の人が預かりますよって夜間の保育を始める話。そのうちに国も追いついてきて認可とかが下りるようになっていたんだけど、補助金があっても年間赤字ですみたいな感じで」

わたなべ(あ)「この人はお坊さんやっているからお寺の収入があるからいいけど、こんなのとってもやってられないものです。でもすごく保育する人が必要みたいなことが書いてあって、で、最終的にもう一回、私たちも考え直さなければいけない、国も私自身も考えるべきではないかっていう提言で締めくくられていた。

他にも『宅急便をテストする』というテーマで、どれだけお金がかかったのかとか、宅急便の出し方とかすごく丁寧にページがつくられていて」

みやした「面白い。国鉄って書いてある」

わたなべ(あ)「JRでもやっているんですね。おばあちゃんから送られてきた小包こんな見た目だったなってなりました。食器を送ったら、どれだけ茶碗が割れなかったかっていうテストもある」

わたなべ(ち)「あ~割れている~」

みやした「ほんとうだ。それを予め知っておかなきゃ割れちゃうからってことだよね」

にしむら「郵便割れている……」

みやした「今なら、ツイッターとかでこうなっちゃったとかって投稿あるよね」

わたなべ(あ)「最後に国への提言として改善して欲しいって書かれていて、保育園の記事もそうだけど、もっと暮らしやすくて、そういう社会にしていきましょうねって」

■雑誌や本の魅力とは。巻末のエプロンメモには暮らしの生の言葉がいっぱい


わたなべ(あ)「雑誌や本はモノとして手元におけるのが大きいよね。

ネットだとあれはどこに書いてあったっけ?ってなったりするけど、モノとして本棚にあると便利だよね。もちろんクックパッドとかでレシピも見るんだけれど」

みやした「ネット検索でもレシピはあるけど、くり返しつくって自分のものにしているのて本に多くある気がする」

わたなべ(あ)
「ネットだと断片的な情報はいろいろ集まるけど、雑誌や本みたいにまとまった形って啓蒙される」

みやした「そう思う。あと暮しの手帖はとくに視点がたくさん見られて面白かった。あとSNSと比べると嫌なこととかに遭遇もしないかも」

わたなべ(あ)「この雑誌も情報が多いんだけど、読んでいて疲れないですよね。ネットをずっとみている、それとは違う」

にしむら「信頼感がある感じがしますね」

わたなべ(ち)「身近なところのギモンを拾っているところが、痒いところにに手が届くって感じなんだろうね。

どの号にもエプロンメモがあるよね。これは一般の人から投稿を募集しているから、本当に時代が出ていて面白いんだよね」

にしむら「エプロンメモ面白くて全部読んだ~」

わたなべ(ち)「そのなかにね『グレープフルーツはふつうに半分にしてスプーンですくっていただきます』って」

全員「なつかしい!!」

わたなべ(ち)「あのギザギザのスプーンでね」

わたなべ(あ)「今考えるとデザートだよね」

わたなべ(ち)「『ぜんぶすくってしぼったあと、皮を手できゅっとしぼるとまだずいぶん汁が出ます」

わたなべ(あ)「出る」

わたなべ(ち)「『それをスプーンすくっていただくと得をしたようなきがいたします』っていう一節なんですけど、そのタイトルが『けちんぼ』ってかわいいなと思って。

わかるわかる!とか、私も今度やろうみたいなのが、編集者の人じゃない言葉で載っているのっていいなと思って」

わたなべ(あ)「読者同士もそういう感じで親近感を抱いていたんじゃないかな」

特集「エンベロープの本屋さん」では、1970~1980年代の貴重な『暮しの手帖』をたくさんご紹介しています。まだスマホがなかったこの頃の暮らし。この時代にタイムリープするように読んでみるのはいかがでしょう。

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