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18.10.10

《おいしいつくり手》天然醸造でつくる味噌/酢屋茂 今井総一郎さん

10月5日(金)にオープンしたEnvelope FOOD HALL(フードホール)。オープン記念のお試しセットにも含まれる「こうじ味噌」をつくるのは、1893(明治26)年創業の老舗醸造元・「酢屋茂」。長野県立科町で、伝統的な製法でつくられた醤油と味噌をつくり続けています。

商品ページはこちらから

■味噌を求めて、長野県立科町へ

フードホールオープンに向けて色々な味噌を試す中で、私たちは酢屋茂の味噌に出合いました。「大豆・米・食塩」と材料は3つだけとシンプルなのに、まろやかでとても深い旨みがあるんです。

つくり手や他の商品にも興味を持って色々調べてみたのですが、ほとんど情報が見つかりません。それなら直接お話を聞いてみたい、そして私たちにご紹介をさせて欲しい、と突然の電話をしたところ、快く時間をつくってくださいました。

▲長野県立科町の街中に、酢屋茂のお店はあります

▲創業当時から変わらない建物。看板は3代目直筆のもの

■前に出過ぎず、陰にかくれて

お店の中に入ると、明治時代から続く老舗ならではの店構え。長い時を経て深みを増している柱や建具の質感に、歴史を感じます。

こちらで、5代目・今井総一郎さんにお話を伺いました。

「酢屋茂の名の通り、最初は酢をつくっていたんです。昔は酒蔵でいいお酒がつくれるかはまだ神頼みで、失敗することもすごく多くて。その失敗作が酢に近いもので、それを引き取って酢に加工して売るところからはじまったようです」

その後お酢は取り扱わなくなりましたが、その技術をいかして味噌・醤油・甘酒などを製造をするようになりました。

現在、つくっているものの2/3以上はオーガニック食品メーカーや生協などのPB(プライベートブランド)品。酢屋茂の名前を冠したものは小売店でほとんど見かけませんし、ホームページもありません。

「ずっとPBのお客様と二人三脚でやってきたので、うちは前に出なくていいんです。そちらで売れれば良いから、陰にかくれていていいという方針で…」

老舗醸造元でありながら、今井さんの姿勢はとても謙虚で柔らかです。

▲お話を伺った酢屋茂5代目・今井総一郎さん

▲店頭では甘酒や醤油も並んでいます

■立科の自然に育てられる、天然醸造の味噌

私たちが感じた、何だかほっとするような、毎日の味噌汁に使いたいと思わされる酢屋茂のやさしい味。これはどのようにつくられるのでしょうか。

「創業以来ずっと天然醸造(※)で味噌や醤油をつくっています。速醸(※)にしようと思ったことはありません。

酢屋茂ならではの味…というと大げさかもしれませんが、私たちが蔵癖(くらぐせ)と呼ぶ、蔵の個性の影響が一番大きいと思います。環境やそこに住む微生物の種類によって、同じつくり方でも味は全く違うものになります。

また、立科は昼夜の温度差が大きいですし、さらに夏と冬の温度差も大きい。そういう気候も微生物の活動には最適なんです」

※天然醸造と速醸…天然醸造は、温度管理をせずに自然の気候に合わせてゆっくりと発酵・熟成をさせる製法のこと。長い時間をかけてつくられるからこそ、まろやかで深みのある旨みが醸し出されます。それに対して速醸は、加温しながら短期間で強制的に発酵・熟成させる製法のこと。3ヵ月ほどで出来上がるそうですが、香りや味が乏しいこともあるようです。

 

▲エンベロープで取り扱うのは、左側のこうじ味噌「吟醸」

■製造場所を見せてもらいました

「うちは手づくり味噌ではないので、それなりの量をつくるためにある程度は機械化しています。イメージと違ってがっかりされるかもしれませんよ(笑)」

そう話しながらも、製造場所を見学させていただきました。

味噌を仕込む工程を簡単にまとめると、以下の3工程です。

1.蒸した米に菌を種づけし、二晩寝かす

2.大豆を蒸して、すりつぶす

3.米糀と大豆、塩を混ぜる

そう、味噌の仕込みというのは実はとてもシンプル。だからこそ、非常に奥が深いのです。

機械化と言っても決して効率を求めて美味しさを損なうものではなく、昔ながらの製法を手作業でできない量で再現するためのものでした。

▲工程2:大豆蒸煮缶(だいずじょうしゃかん)というこちらの機械で、大豆を蒸します

▲工程3:すりつぶした大豆、米糀、食塩をここで混ぜます。一回で大体100kgほど混ぜることができるそう

この仕込み作業を行うのは極寒の1月頃。仕込んだ味噌は、約1年間かけて発酵・熟成していきます。

▲熟成の工程後、大きな冷蔵室で保管され出荷の時を待ちます

■毎日一杯の味噌汁を

最後に、今井さん自身はお味噌をどうやって食事に取り入れていますかとたずねると、こんなお話が返ってきました。

「毎日味噌汁は飲みますよ。あとは、野菜につけて食べたり。

ずっと味噌汁が塩分の取り過ぎにつながって健康に悪いと言われていましたが、ここ最近の広島大学の研究で、逆に血圧上昇を抑えて健康にいいことが分かったようです。だから減塩味噌にする必要はなくて、普通の味噌でいいと思うんです。

今、味噌汁を飲む人ってどんどん減っていますよね。けれど、毎日味噌汁を飲む習慣って、人をほっとさせる力があって、健康だけでない良いところがあるはずと信じています」

取材中、控えめで主張のようなものをほとんど口にしなかった今井さん。最後に、誠実にものづくりをする方だからこその真っすぐな想いを聞くことができました。

▲少し変わった食べ方も教えてもらいました。蕎麦に直接味噌をちょこんとのせて、そのまま食べます。酢屋茂が醤油・味噌を卸している蕎麦屋さんが教えてくれたそう

▲少し変わった食べ方2つめは、立科地方ではスタンダードという甘酒アレンジ。写真左から、胡桃、甘納豆、大豆を甘酒で和えたものです。大豆を和えたものは「おなっとう」と呼ばれるそう。スタッフ一番人気は、今井さん一押しの甘納豆でした

■味噌と甘酒をお取り扱いします

・こうじ味噌(吟醸)

米糀が大豆の1.5倍使われている少しリッチな甘口タイプ。米糀の良い香りと深い旨みを感じる、やわらかい味わいです。商品ページはこちらから

・甘酒(10月下旬発売予定)

材料は米と米糀だけ。米糀の発酵の力だけでつくられた、砂糖が添加されていないタイプです。濃厚だけどスッキリとした甘さで、一年中甘酒を飲むエンベロープスタッフも太鼓判を押した一品。

カテゴリ:エンベロープフードホール, おいしいつくり手

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