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言葉を添えること

フランスのアーティスト、 ソフィ・カルの展示「限局性激痛」を見に原美術館へ行ってきました。

この個展は、1999年の同展示を20年ぶりに再現したもの。
ソフィ・カルが三ヶ月間日本に滞在したときに経験した「人生最悪な日」までのカウントダウンを、写真や手紙で構成した第1部、その傷を癒すために他人に話を聞いてもらい、他人からも人生で最も苦痛だった経験を聞き、写真と言葉を並べた第2部、で構成されています。

私もつらい経験をしたらまずは人に会って話す、その人の話を聞く、ということをしていました。感情が薄れ、1つの出来事として捉えられるようになるからです。ソフィ・カルの作品を見た多くの人も、自身の重い経験を思い出しつつも、どこか穏やかな気持ちになっているのではないでしょうか。

▲原美術館といえば…の、展示に合わせたイメージケーキ。毎回頼んでしまいます。閉館に伴い2月までの提供だそう


何かを表現するとき、その文脈を言葉で伝えることは不可欠だな、と最近実感しています。

ソフィ・カルのほとんどの作品は、写真と言葉がセットになっています。
誰しも経験のあること(生死や別れ)をテーマにしているからかもしれませんが、言葉があるとただ写真を見る以上にわかりやすく、パーソナルな出来事により近づくような、一歩自分の中に入り込んでくるような感覚があります。 写真を「眺める」から「知る」に変わるのです。

言葉で語れないというのは弱さでもありますし、語るとあまりに力が強く、結構かんたんに人を傷つけます。そう意識できる人でいたいし、そういう人と共にいたい、と仕事や日常で考えるのでした。

▲銀座のギャラリー小柳では「なぜなら」展をやっています。言葉の書かれた布をめくると写真が現れます


今、銀座と六本木の2つのギャラリーでもソフィ・カルの展示をやっていて、こちらもおすすめ。作品数は少なくても見ごたえがあります。無料なので、近所にお出かけの際ふらっと寄ってみてもいいかもしれません。