スタッフこぼれ話

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固有名詞で伝える

最近体調を崩し気味で、休日は家でゆっくりしている日が多かったのですが、この前1日だけ、あれ?調子いいぞ?という日があったんです。

これはチャンス!と思って映画館に行って、もうスクリーンで観れないかと諦めかけてた『花束みたいな恋をした』を鑑賞してきました。もともと坂元裕二脚本のドラマファンで、初の映画オリジナル脚本作品をずっと前から楽しみにしていたんです。

ストーリーのことは置いておいて、観終わってすごく印象に残っているのが、この映画の特徴のひとつである「固有名詞の羅列」でした。

天竺鼠、cero、Awesome City Club、クーリンチェ(『クーリンチェ少年殺人事件』)、舞城王太郎、今村夏子、『宝石の国』、『ゴールデンカムイ』、『菊地成孔の粋な夜電波』…などなど、サブカルチャー好きの主人公2人の会話の中には固有名詞が洪水にようにでてきます。共通の固有名詞で盛り上がれると、気が合うような錯覚を起こしますよね。そんなところから物語ははじまります。

日本の音楽やドラマ、映画には固有名詞が出てくることが海外に比べると極端に少ないそう。使用許可の面倒くささやスポンサーの絡みもあるけど、その方が「普遍性がある」と考えられてるのだと思います。でも、とある映画評論家の「固有名詞があることで、やっと普遍性を獲得する」という全く逆の趣旨の話を聞いて、私はすごく納得しました。
 
誰にも当てはまる当たり障りもない話は普遍的になる前にそもそも届かないことが多くて、固有名詞がそこにあることで初めて伝わるようになって、それが普遍性を帯びるものになるのだな、なんて思います。

といっても、固有名詞って、取り扱いが難しいですよね。あと、気恥ずかしい。

この小さなオンラインショップの気軽なコラムを書いてても、この固有名詞出していいかな?やめとこうかな?なんていつも悩みます(音楽と映画の話とは少し性質が異なりますが)。でも、少しでも何かを伝えたいと思ったら、固有名詞を挙げる勇気みたいなものは必要なのかもしれません。

今回実際に作品名を挙げて映画のことを書いてみたのも、今までは恥ずかしかったのですが、そんなことを考えた結果の小さなチャレンジでした。