スタッフこぼれ話

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移築というロマン

漫画よりも小説やエッセイ派、写真よりどちらかというと絵画やイラストが好きな私は、休日を美術館で過ごせるといい一日だったなと思います。

ほかにも弱いのは建築をみること。木造住宅や伝統建築、西洋建築、とくに決まって好むジャンルはなく、場所を味方にしたたったひとつの建築をみると、ロマンや儚さを感じて背景を調べたくなります。

名建築だから好きだとかそういうのでもなく、建物や建物が担う存在そのものが好きな感じ。先週、新潟の実家に帰省する機会があり、上越市ゆかりの日本画家の小林古径の自邸と画室を観に行ってきました。


これらは移築と復元によって建築されたもの。ずいぶん前から工事が行なわれ、「そういえばどうなった?そろそろ終ってるかな」と向かうと、趣のある街と調和した外観が。

設計者は吉田五十八。彼の建築は初めてでしたが、予想よりもふつうの数寄屋建築。
ディテールはところどころ繊細な感じの印象的でしたが、それ以外の凄さはまだまだ見つけられず、わからないなぁとも思いながら、観光地への旅行のごとく見学しました。

小林古径が住んでいた住宅は、細い描線に特長がある小林古径が「私が好きだという家をつくって下さい」と、一言だけ伝えて依頼したもの。設計者の吉田五十八は彼の芸術を研究し設計に落とし込んだそうです。

隣に建築された復元による古径の画室は、大壁づくり(柱のみえない木造住宅)の始まりと称される空間。天井高くダイナミック。壁一面からたっぷりと光を取り入れ、なんとも気持ちのいい空間でした。

入口を抜け、そこから起承転結のようにつぎつぎと視界が変わってゆく建築の仕掛けは、コースディナーのように楽しく贅沢な時間に感じます。

▲東京駒込から移築された住宅(右)と復元した画室(左)


建築は社会経済やパトロン、思想に絡まり、強く影響されながら建つもの。
今回は小林古径でしたが、美術家や投資家には建築家を見極めて、ぜひ面白い建築に投資していただきたい、と思うのでした。

▲小林古径邸に置かれた建築2作の掲載誌。山と連なる構図に惚れ惚れ