スタッフこぼれ話

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古い雁木通りに、エネルギー溢れる書店

私の地元である新潟には、庇のついた町家が連なる「雁木通り」があります。

その庇越しにのぞく雪景色や陰影ある世界が育った街の景色で、大人になって知人と建築の話をしたり町家の本を読んだりするうちに、それがなかなか珍しく日本一の長さの雁木だということを知りました。

▲雨や雪を避ける庇は、大雪が続いても通り道を確保するために存在します

子どもの頃はまだ活気があった商店街もシャッター街に変わり、大型の複合施設へ買い物に行くのが一般的な時代に。そんなふうに街の風景が変わってゆくなか、都内の大学に通う大学生が東京と新潟の2拠点で行き来しながら、雁木通りに書店を開いたことをインスタグラムから知りました。「なんと!」と、高揚したのが先月、さっそく行ってきました。

その日の「たてよこ書店」は、零度に近い気温でありながら、八百屋のように開口部が全開。店奥で炊かれた灯油ストーブの暖気と冷たい外気が交わるのを入った瞬間に感じて、なんともロックな感じ。

▲閑散とした雁木。肝心な「たてよこ書店」は高揚して撮り忘れました…

通り過ぎる車の騒音が爽快で、真冬なのにどこか夏休みのような様相も。少しすると、店主の方が気軽に声をかけてきてくれて話をすることができました。1時間近く居た中で、15分くらい経つと開口部は半分ほど閉められ、心地のよい音楽が流れはじめました。

雪国の町家は雪下ろしのため、二階や三階を設けたつくりになっているんですが、たてよこ書店という名前は、雁木のようによこにもたてにも広がっていくようにという願いが込められているそう。

古い寂れた雁木通りに若い世代の店主がいる光景は、なかなかこの街ではみたことがありません。2024年は複合施設になるんだとか。やりたいことにできない理由を探すのではなく、軽々と実現して行く様子は、新年から刺激を受けました。

▲雑誌『POPEYE』の「ジャズと落語」と大江健三郎のエッセイを購入。二冊で計800円