スタッフこぼれ話

ちょっとしたできごと、のんびり配信

傾斜に圧倒される、知の建築

出版社KADOKAWAが運営する「角川武蔵野ミュージアム」がオープンしたのは2020年のこと。

ブックブログ千夜千冊を手がける松岡正剛が館長となっている本のミュージアムということで、いつかは行きたいと思っていたのですが後回しになっていました。

場所は東所沢。駅を下りて10分程歩くと、広がる公園越しに遠目にみえる石のかたまり。目的地に向かって近づいていくと、まるで重力に逆らうような傾斜の、力強い建築が佇んでいました。設計は隈研吾さん。「もっと早く行けばよかった……」というのが感想。自分の好き嫌いや考えなんていつ変わるかわかりませんね。

この場所は入館料を払って入る大きな図書館のようなところで、5階建ての石のかたまりにライトノベル専門のフロアや図書館やアートギャラリー、カフェが展開。

その中にはエディットタウンという、松岡さんの思想「編集工学」が体現されているブックストリートがあり、そこにはオリジナルのカテゴライズ(文脈)の本棚が並び、2.5万冊の本がセレクトされています。

▲画面に映る、松岡正剛さん。このエディットタウンの概要を説明
▲様々な本棚があり、そこに松岡さんのメモがあります

編集工学とは、ジャンルを越えて知識の横断をして結び直ししていくことが編集。それこそが世界の新しい見方を生み、社会の発展に繋がるという考え方。そこにはメディアなどの忖度や偏りもなく、自由に繋げることで本来の価値を引き出していく作業だと言います。

そのブックストリートでは、いろんな文脈の本棚があって、好きな事柄に出合っては本を開くのくり返しなのですが、一人でふらっと行ってしまったため、自分だけの知識で横断することしかできず、懐かしい本の遭遇みたいな時間になっていました。

きっと誰かと訪れることで好きなものや知識が二倍になり、立ち止まる場所の量や面白さ、新たな見方が倍増するようなところ。人と話し合うとか、意見を言い合うことの大切さ、そういうことを重要視することでたどり着ける境地があることを感じる場所でした。

行かなきゃ分からないこと、もっと知らなきゃ本当のところに近づけないこと、そんなことで世界は溢れているはず。

中も非常に魅力的でしたが、外観も歪な面白い建築でした。入り口に向かっていくと、ありえない傾斜にくらくらするような感覚。

これは、松岡正剛さんの世界を建築で表現しようとしたのでしょうか。知のかたまりに圧倒された一日でした。