7月、雲ひとつない夏の青空が広がっています。

以前はフランス北部で30℃を超えることは
そうそうなかったように記憶していますが、
ここのところ危険な暑さを知らせるアラートが出ることも増えてきました。

湿度が低くカラッとしているので日陰に入れば
エアコンなしでも過ごせるものの、気温が高い日は
こちらでも熱中症に注意が必要です。

パンデミックの影響で中止されていたリネン祭りが、
今年は3年ぶりに開催されました。

このお祭りはリネン栽培が盛んなノルマンディ州
セーヌ・マリティーム県にあるいくつかのコミューンが会場になり、
主にはリネンや繊維を使って表現されたアートを展示する催しです。

展示会場になるのは歴史的建造物であるところも多く、
普段は開放されていないお城や教会へ入場できる貴重な機会でもあります。

▲16世紀に建てられたシレロン城内にあるルイ13世様式の礼拝堂

今回はプログラムのひとつにあった、リネンやジュート生地の
織物工場見学に参加しました。

▲工場の入り口に貼ってあった 「喫煙禁止」のマーク

この工場のことをお伝えする前にまず知っておきたいのは、
リネンが生地になるまでの過程です。

ノルマンディはリネンの原料フラックスの世界最大産地ですが、
こちらで栽培され畑から回収されると繊維を取り出す工場へ運ばれます。

ここまではノルマンディで行われますが、この後多くは低価格で
生産できるアジア諸国へ渡って紡績糸になり、
その糸がまた世界各地の製織工場へ送られます。

お洋服や生地に記載されている ”MADE IN 〇〇” というのは
最終加工地を示しますが、こんなにもあちこち遠い国々へ
輸出入を繰り返すのは、環境によいはずの素材をつくる背景として
少し残念な気持ちになります。

1845年に創業されたロンシェ社は産地で最終加工をする製織工場で、
バック等の布小物やインテリアに使う粗織り生地を多く製造しています。

かつてフランス国内に数多くあった織物業ですが、
現在はこちらを含めほんのわずか残るのみとなりました。

代々同族経営してきたこの工場も後継者不足から
5代目で閉めることを考えましたが、

幼い頃から作業場を遊び場にし親しんできた6代目が、
MADE IN ノルマンディをつくり直したい!と再起を決めたそうです。

▲紡績工場で紡がれた糸はこんな風に大きな巻きで届きます

▲大きな音を立てたくさんの機械が働いていました

▲短い幅のトーションを複数枚同時に織るシャトル機。横糸は共通で、付属の歯でカットしながら織ります

リネンの製造を取り戻そうというこうした取り組みは、
まだ小さい規模ながらも度々耳にするようになりました。

こちらで長く働く職人さんが「糸切れした際はこうやって結ぶ。
結び目が大きいと織機に入らないからね」と結び方を教えてくれたのですが、
何度か挑戦したもののうまく出来ませんでした。

技術というのは最大の財産で簡単に絶やしちゃいけないなとその時強く感じました。

▲海沿いで見つけたフラックス畑。そろそろ収穫の頃

ENYO ソリアノ
http://laviedenyo.blogspot.com/