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18.10.02
〈家具のお話〉オールドパインチェスト
エンベロープではヴィンテージ家具を取り扱っています。昔使っていた人たちがどんな生活を送っていたのか思いを馳せ、“生活にとけこむ” 家具をセレクト。 その良さをより多くの方にお伝えできたらと、ヴィンテージ家具専任スタッフの「家具のお話」をお届けします。今回はおよそ100年前につくられたオールドパインチェストについてーー
■やわらかな佇まいが魅力です
今回紹介するオールドパインチェストはヴィクトリアン時代、およそ100年以上前につくられたものです。
このチェストの魅力はなんといっても、そのやわらかな佇まい。
天板の割れや節穴など、本来ならマイナスにカウントされてしまう要因も、100年前の幅広のパイン材が醸し出す落ち着きのある質感にかかれば、魅力的な個性に変わります。
全体を一度剥離したあとにリフィニッシュしているので、コンディションは良好。引き出しの中もきれいにメンテナンスしてあり、開け閉めもスムーズです。
■農作業の合間に手間暇かけて
カントリースタイルのこのチェストは、きっと、のんびりしたカントリーサイドで、農作業の合間に手間暇かけてつくられたのでしょう。
柔らかくて加工がしやすいパイン材だから、あまり高度な木工技術は必要なかったのではないかな?
ちょっとくらいのずれや隙間は許容範囲、と受け入れ、普段使いの日用品として生活に溶け込んでいた光景が目に浮かんできます。
■やさしさが片隅にある生活
やがてモダニズムという波が押し寄せ、つくり手も使い手も「簡素」で「効率的」なものを求めるようになります。
家具でいえば「継ぎ目のない」「なめらかに磨き上げられた」デザインが席巻し、「機能的」で「シンプル」な空間を生み出していきました。
洗練されていて衛生的だとは思いますが、傷や凹凸を寄せ付けない美意識は緊張感を孕み、その家具が丁寧に編んできたストーリーやつくり手の息遣い・表情を覆い隠してしまっているような気がしてなりません。
このチェストは、まちがえて付けてしまった傷や輪染みを優しく包み込んでくれる、そんなやさしさにあふれています。
痕跡(=傷や輪染み)が、大切な記憶(=思い出)のひとつに変わる、そんな家具が部屋の片隅にある生活はいかがでしょう。
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