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20.01.29
《おいしいつくり手》レストランでも家庭でも。中尾アルミの鍋が愛される理由。
「中尾アルミ」といえば、プロの料理人にはおなじみの調理器具メーカーです。おいしいもののためには妥協を許さない名シェフに愛されている鍋やフライパンは、もちろん家庭用としても優秀!ご自身も沢山の鍋を愛用している、中尾アルミのスタッフ野中美月さんのご自宅にお邪魔しました。
■持っていたお鍋の出番が減りました
野中さんはスタッフ歴3年目。もともと調理器具が好きだったので色んな鍋をもっていたのですが、いまではほぼ自社のものばかり使っているそうです。
引き出しや棚を見せてもらうと鍋がずらり。フライパンだけでも色々なサイズが揃っていて、きれいに収納されていました。
「仕事柄、お客様に商品を説明するためでもありますが、実際に使ってみると本当に使いやすくて…。買い足していくうちに、これだけの数になりました」(野中さん)
熱の伝わりがよいこと、そして軽いこと。そんなアルミ素材の特徴を活かしてつくられている、中尾アルミのお鍋。使っている様子を見せてもらいました。
■アルミだから出せるおいしい味って?
「アルミだからできるおいしいものを教えてください」そんなお願いをしたところ、野中さんがつくってくれたのがペペロンチーノ。
オイルとにんにくのシンプルな料理を成功させるには、ソースの乳化がポイント。アルミだとこの乳化がうまくいくのだそうです。
まずはフライパンにオイルとにんにく、唐辛子を入れて温めます。
じゃっ!おたまでパスタの茹で汁を加えます。
茹で汁とオイルを混ぜ合わせていくと、さらさらとしていたソースがとろーりとしてきました。
木べらでフライパンに線が描けたら 乳化完了の合図です。こうしたちょっとしたソースの変化も、シルバー色のアルミならわかりやすい。
イタリアンレストランのようないい香りが漂っています。
「テフロンのフライパンだと表面のすべりがいいけれど、水分と油分が一体となりにくいんです。
その点アルミはひっかかりがあるので、まざりやすく乳化がうまくいきます。そうすると麺とソースもからまりやすく、麺にもしっかり味がついたお店のような味が出せるんですよ」
しかもステンレスよりも軽いアルミなら、シェフのようにカッコよくあおれます。中尾アルミのハンドルは、あおりやすいように設計されているのでなおさら。
「あと、実は和食にもおすすめ。素材にむらなくしっかりと熱が通るので煮物がおいしくできるんですよ。
私は肉じゃがや魚の煮つけ、ロールキャベツ、煮込みハンバーグなどもよくつくります。フライパンとしてではなく、浅い鍋として考えたら料理の幅が広がると思います」
■ 料理に合わせて、お鍋も使い分け
大、中、小。まるでボウルのようなこちらのお鍋は「ヤットコ鍋」というのだそうです。
「持ち手のない雪平鍋、ヤットコ鍋は、何より重ねられるのがいいところです。こんな風に狭いスペースに重ねて収納できるし、軽いから片手でも取り出しやすい。
残りものをそのまま冷蔵庫に入れられるので、便利です」
3サイズをフル活用して主食、副菜、お味噌汁をつくることも。 確かに3つのコンロを同時に使っても、持ち手がない分邪魔にならず作業しやすいですよね。
そのほかボウルとして和え物に使ったり、お客様にはキャンプに持って行く方もいるそう。燃える部分がないから、そのまま薪にくべて外ご飯を楽しむそうです。
つつーっと気持よく水が切れるこちらのお鍋は、その名も「ペリカン雪平鍋」。ペリカンのくちばしのような注ぎ口なので、底面に水分がつたわることなく注げます。
「ペリカンは1.7mmとアルミ厚が薄めなので、お湯がすぐ沸くのが持ち味です。我が家ではこれで毎朝カフェオレやミルクティをつくってます。
中尾アルミの鍋はどれもそうなのですが、内側に目盛がついているのでいつも同じ味に仕上げられるんですよ」
つくるものに合わせて鍋を使い分けている野中さんですが、料理以外にもアルミを活用。収納などにキッチンのあちこちで使われていました。
■ 日々の亀の子たわし、やるぞ!という時のスチールウール
ご家族4人分のごはんをつくるために頻繁に使われているのに、野中家のお鍋はどれもピカピカ。お手入れには昔ながらの亀の子たわしを使っているそうです。
「亀の子たわしで汚れを落としてから、洗剤をつけてスポンジで洗うときれいになりますよ」
そう言いながら、パスタをつくったフライパンを洗って見せてくれたのですが、オリーブ油や麺のぬめりもさっぱり。あっという間にきれいになりました。
憂鬱なカレーがこびりついたお鍋も、アルミならゴムへらでつるっと落とせるのだとか。さらにペーパーでふきとれば、スポンジがべとべとにならずに洗えるそうです。
もう一つ、お手入れするぞ!という時に使うのが「スチールウール」。これで磨くと、鍋についた黒ずみをきれいに落とせるのだそうです。
お手入れが行き届いた鍋は、新品のものとはまた違った美しさがありました。アルミの鍋も天然素材と同じで、育てる道具なのですね。
■ 大切なのは、おいしいものがつくれるかどうか
鍋がどのようにつくられているのか、店長の鈴木匠さんにもお話を聞きました。
中尾アルミの創業は昭和33年。東京北千住の先代社長の自宅からスタートしました。
その10年後には埼玉県八潮市に工場を構え、鍋を加工する大きな機械を導入。4mmという極厚のアルミ鍋も、直径60cmの大きな鍋も特殊加工ができるこの機械により実現します。
とはいえ、機械だけではいい鍋はつくれないそうで…
「機械へのセッティングは、製造する人の経験がものをいいます。その人の力の加減や、金属も時季によって状態が違うので、季節やその日の天気、湿度の具合などを見ながら扱わないと製品に影響するんですよ。
オートメーションとはいえ、やはり人が大事です」(鈴木さん)
もう一つ同社が大事にしているのが、料理をつくる人の声。
「鍋には鍋の世界があるというか、一見どれも同じように見えるかもしれませんが、ちょっとしたことで使い心地が変わってくるんですよ。
最初は図面通りにつくりますが、実際に料理をしてみて使った人の声を聞き試行錯誤しながら仕上げます」
60年以上の歴史の中では、現場の声が生かされた数々の名品が誕生しています。例えば4mm厚の「プロキングシリーズ」もその一つ。
「 銅製の鍋がよいとされていた時代、あるホテルの料理長の『アルミで4mmあれば銅と同じことができるんだよな』って何気ないひとことを先代の社長が真に受けてつくったのがプロキングシリーズです。これなら銅と変わらないでしょって。
「 ヤットコ鍋も厨房では持ち手があると邪魔になってしまうという声から生まれたものだし、テフロンのフライパンもそう。コックさんも鉄のフライパンをあまり使わなくなってきた中、長持ちするものが欲しいというリクエストに応えて開発しました」
すべてはおいしいものをつくる人のため。
調理道具といえば中尾アルミというくらい著名なメーカーですが、その信頼をつくっているのは一人一人の人なんだなということ。
製造者だけでなく、それを売る人達も自分たちの製品が好きで誇りを持っていることが伝わってきて、そんなことを感じた今回の取材でした。
*中尾アルミのフライパンはこちらのページでご紹介しています(今回の記事で紹介している商品とは一部仕様が異なります)。今後も新しいアイテムが加わっていきますので、どうぞお楽しみに。
カテゴリ:エンベロープフードホール, おいしいつくり手
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