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23.06.16

《つくり手ファイル》やわらかさと硬さが両立する「ラテックス」を通じて、睡眠の大切さを伝えたい/Bodydoctor 沼上舜さん

やわらかいのに支えてくれる。そんな二つの要素が不思議と両立するのが天然ゴム「ラテックス」のいいところ。その性能にいち早く着目したのがBodydoctorのはじまり。入社16年、その魅力を伝え続ける沼上舜(しゅん)さんに話を聞きました。

■大使館パ―ティで紹介された、腰痛にいい素材

JR逗子駅から車を走らせ15分。山緑が望める国道134号線沿いにあるのが、Bodydoctorのショールーム兼オフィス。

都心の喧騒から離れた、のどかな土地に建つその様子は、街の小さな診療所のような趣きがあります。

Bodydoctorの商品を手がけるグローバル産業が創業したのは、昭和59年のこと。

当時、腰痛持ちだった大和久(おおわく)社長が外国で悩みを話したことからラテックスとの出合いがはじまったんだそう。

「きっかけは会社の代表である大和久が30代後半の頃、腰痛に悩まされていて、そのことをマレーシア大使館のパーティーで話したところ、これを使ってみなさいと勧められたのがラテックスでした。

輸入して実際にマットレスのサンプルを使ってみると見事に腰痛が軽減し、そのことからこの素材を広めよう、と。はじめはマットレス、まくら、三角クッションの3種類から取り扱いがスタートしました」

▲Bodydoctor 営業担当の沼上舜さん

「実は僕も入社してから腰痛が解消されたんですよ。入社後、まず商品をレポートするということで、会社から一枚提供してもらえるんですが、入社する以前は三つ折りの低反発ウレタンマットレスのダブルを使って妻と一緒に寝ていました。

ダブルだったから寝返りがしにくかったのか、だいぶへたっていたマットレスを使っていたのでそれで腰痛が発生していたのか、後から考えるとそんな感じだったんですが」

■低反発でも、高反発でもない「正反発」

Bodydoctorの枕を実際に使ってみると、頭が軽く、顔や首にシワができないかもって思えるくらい支える力があって驚きました。

ホームページではそんなラテックス素材を「正反発」と謳われています。これはどういう意味なんでしょう。

「正反発とは弊社がつくった造語で、商標をとってそう呼んでいます。低反発や高反発と使用感が違います、という意味です。

材料の天然ラテックスフォームは、沈んだ体積に比例して反発するという特性があり、加わった体重に対して、その反発力がつり合います」

▲感触は若干やわらかいが、ゴムを押すような感覚で硬さもある

「跳ね返りが低いのは低反発です。高反発は逆に低反発の突出した部分を吸収する性能がありませんので、身体の凹凸があると、出っ張った部分に反発力が加わって圧迫点が集中してしまうのです。

でも、正反発はやわらかくありながら反発するので、出っ張った部分は包み込むようなかたちでしっかり支えてくれる特徴があります」

▲ラテックスのやわらかくて硬い弾力性は貴重で、ウッドスプリングの足にも使われる。ラテックスと木のしなりを組み合わせることで、通気性に富んだ寝心地のいいウッドスプリングが生まれる

■樹液をたい焼きのように金型に流し込んで

ゴムだけど、アイテムによってはマシュマロのようにやわらかいBodydoctorのラテックス。商品ごとにラテックスの密度が異なり、それはブラジル原産のパラゴムの木の樹液からつくられます。

「100%の天然ラテックスは、ゴムの木の樹液を抽出して樹液のみでつくられるんです。その製法は、まず樹液をミキシングしてホイップ状のクリームみたいにしてから、金型に流し込んで高温で蒸し焼きにします。

それに対して合成ラテックスは、100%石油でつくられている人工のゴムです」

▲ゴムの木

「ラテックスマットレスは、1920年にダンロップ社が世界ではじめて開発をしました。

グローバル産業は1980年代後半から、原産地マレーシアから日本人向けに企画したラテックス製寝具の輸入を開始し、今日に至ります」

「イメージ的にはたい焼きを焼くのと一緒でじっくり加熱していくようにつくられます。枕一つの金型に対して一日の生産量が8個程度なんです。

そう考えると、金型をたくさん持たないといけないのですが、それが高価でして……。

なので、たくさん発注を頂いた場合半年くらいお待ちいただいています」

▲弊社のラテックス製品は、一時間半ほど蒸し焼きにしてつくり出される
▲やわらかい、中間、硬い、とアイテムごとにラテックスの密度を変えている
▲布団派のために開発されたfuton5は最も硬いタイプ。薄くても床付き感がないようにラテックスは高密度に。折り畳めてコンパクトに収納でき、もちろんベッドでも使える


■体圧分散性が高く、医療用としても定評

Bodydoctorのマットレスは、2000年から介護保険制度に認定された福祉用具の「床ずれ防止用具」として推奨され、医療用のマットレスとしても評価されています。

「床ずれは身体の一部が圧迫されることなどから起こるのですが、ラテックスは体圧分散性に優れ、柔らかくて硬いという相反する性質を両立しています。

高い抗菌活性や抗カビ性を持ち、ボディドクターの医療用マットレスカバーは防水性があることから簡単に拭いたり、清潔に保つことができるという点も医療用に適しているんです」

体圧分散性に優れた素材が求められるのは、身体だけでなく頭も一緒。Bodydoctorの「ドクターピロー」は、枕難民にもおすすめ。シンプルな形状が頭を軽く支えてくれます。

「ラテックスは点を吸収して面で支えているんです。吸収した部分に圧力がかかりません」

「髪の毛を結ってお団子みたいな状態にして寝ると、結んだところに圧力がかかって痛いとかある、そういうのが起こりにくい、そんなイメージで考えてもらえたらと思います。

首もどこも圧迫せず、バランスよく均等に支えてくれる。使うと頭が軽い感じがするというのは、そういうことだと思います」

▲Bodydoctorの枕ドクターピロー。ゴム製だけど違和感のない自然な触感がラテックスの魅力だという

■寝具業界にいて考えることは、子どもの眠り

支える力とやわらかさに優れた素材ラテックスですが、ゴム素材ならではのデメリットもあります。他の素材と比べて蒸れやすいのとささやかにゴムが香るという点。

沼上さんはラテックスこそ、リネンなど熱伝導率のいい天然素材と組み合わせて使って欲しいといいます。

「僕の家族もリネンのシーツやリネンのパッドと一緒に使っています。子どもたちは夏場ラテックスだけだと、暑いのか寝返りしてフロアで寝てしまう。

ところがリネンのパッドを敷くことによって熱伝導率がいいので子どもがきちんとマットレスの上で寝てくれるのを実感しました。

高校生と小学生の子どもがfuton5を使っていて、妻はBodydoctorのレギュラータイプにキャメルのパッドを敷いて寝ていますね。僕は、自分で商品開発したラテックスのマットレスのプロトタイプ(マットレスに羊毛のパッドを内蔵しているもの)を使っています」

「僕は年がら年中変えて、ついこの間まではアマゾンで星5つになっていたウレタン素材を使っていました。売れている商品というのは何らかの理由があって、それを知るために日々いろんなマットレスで寝ています」

▲マットレスの役割は身体をしっかりと支えること。通気性や吸湿発散には優れていない点を夏場ならリネンを、冬場なら羊毛やキャメルが解決してくれる

本当にその人に合った商品を提供することや、Bodydoctorにとってブレイクスルーとなった床ずれ防止のマットレスのように社会に貢献できる新たな取り組みを探している、沼上さん。

寝具業界を越え、さまざまな相談の声をもらうことからも、仕事のやりがいを見出しているんだそう。

▲Bodydoctorのショールームから逗子駅に戻る途中にある、葉山マリーナ

最後に、この業界で長く働いていて考えていること、これからのことを聞きました。

「やっぱり眠ることの大切さを啓蒙していきたいですね。特に子どもたちには、心と身体が成長する時期にしっかりと眠って欲しいなと思います。

今の暮らしって子どもたちも夜型になっていると思うんですよね。夜遅くまでPCを使ったり、スマホを使うことで脳が休みにくい状況ってのがどうしてもあると思うんです」

「子どもたちにとってどうして眠ることが大切なのか。それは、日中に得た情報を整理して自分の記憶を脳みそに定着させるってことが睡眠の最大のポイントだと思います。ただ現代の社会は誘惑が多いですよね。

睡眠の大事さを伝えるって言っても、寝具の販売なんですけど、子どもたちも含め、幅広い世代の方に質のよい睡眠をとってもらうために導いていきたいというのも僕のミッションではあります」

写真提供:グローバル産業 10~14枚目

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カテゴリ:エンベロープの寝具店, つくり手ファイル

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