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20.07.31
《工場見学5》MEYER MAYOR/スイス
2003年から2009年頃にかけてリネンバードのウェブサイトに掲載していた「工場見学」を改めてお届けします。今回ご紹介するのはスイスのマイヤー・マイヨール社。高性能なマシンが活躍する製織工場ですが、それと同時に古い機械や製品への愛が感じられる会社でした。
※この記事は当時のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる点があります。
■高性能のマシンとクラシカルな機械が共存
スイスといえば観光の国。そして時計や精密機械が有名ですが、かつては織物産業の国でもありました。
チューリッヒから東南方向に車で1時間、裏山で夏にはハイキング、冬にはスキーといった場所に、マイヤー・マイヨール社はあります。
この地に工場が引っ越したのは1800年代の終わりごろ。風光明媚な場所を選んだのはいい水があったからで、海のないスイスでは、当時工場は必ず川沿いにあったそうです。
川から引く水で動力を起こした水車タービンが今もあり、この機械室は地元の小学生が理科の授業で必ず見学にくるので、その仕組みを説明したパネルが常時用意されています。
この工場は今まで見た製織工場のなかで、飛びぬけてきれいで床に繊維くずさえありません。リネンの他にコットンや合成繊維を扱うことが多いからかもしれないし、直前に掃除をしてくれたのかもしれませんが、後で伺ったオフィスもとにかくきれいでした。
そして高度にオートマティック化された織機のおかげで、今日はお休みかと思うほど人が少ないのです。ジャカード織りのための高性能マシンは、キッチンタオルを横に4枚とれる広幅で、驚くほどの速さで織りあげていきます。
マイヤー・マイヨールはウィービングだけの工場で、リネンの糸は主にイタリア製です。 そして下の写真が、今のマイヤー・マイヨール社を支えている、軽量で丈夫な布を織るための合成繊維です。
ヨットの帆、熱気球、ハングライダー、パラシュートなどに使われている素材で、ものすごく薄い布もありました。
これを可能にしているのも、最新の高性能マシンなのですが、エプロンのリボンを織るためだけの織機や、キッチンタオルの自動折りたたみ機があったりと、社長はきっと機械好きなのだと思います。
使い古した機械類は、主に東南アジアに売られていくそうです。
この工場には、そうした最新鋭のものがあると同時に、古いものもたくさん混在しています。
どれを残してどれを新しいものに替えていくのか。それをどのように決めているのかわかりませんが、そのミックスが会社全体のなんともいえない魅力になっているように思います。
シャトル織機や、ジャカード織りのパンチングカードをつくる機械など、いろんな古い機械・道具類が織物を習う学生のために解放されています。
そして私たちの心をしっかり捉えたのは、なんといっても古いキッチンタオルやハンカチのアーカイブス。1800年代後半から、1980年ごろまでびっしり大きなブックに記録されています。
資料のデジタル化が進む今日ですが、やはり布は目で見て触ってみて、愛おしさが増すことがよくわかります。
社長のマイヤー氏は5代目です。モンゴルに冒険旅行で行ったことはあるけど、日本には来たことがないそうです。
写真で見るとおりの人で、伝統ある織物業を継承し、変遷する産業構造にあわせ常にチャレンジを続けています。数多くの製織工場が閉鎖されていくスイスにあって、長く続けていけるのは彼の手腕に拠るところが大のようです。
これからの道路を丁寧に教えてくれました。途中ハイジ博物館に寄り、2時間も車で走ればゴッタルト峠を越えた向こうはイタリアです。
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