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18.03.25
《つくり手ファイル》木工家田澤祐介さん×和菓子職人長沼輪多さん:後半
4月6日(金)より二子玉川のshedで開催される「田澤祐介/木工展」。今回の展示会に花を添えるのが、「梅香亭」の和菓子職人長沼輪多さん。田澤さんの器にあわせてお菓子を創作します。田澤さんにお話を聞いた前半記事はこちら。※こちらの展示会は終了しました。
■田澤さんの木の器に合わせて
春の訪れを感じさせる3月半ば。展示会のためのお菓子が完成したと聞き、長沼さんのもとを訪ねました。
整然と道具が並ぶ静かな休日の工房。そこで目にしたのは、つやつやと宝石のように輝く鹿の子でした。
「和菓子は趣向を凝らしたものが多いのですが、器が映えるように素材を生かしたシンプルなお菓子を選びました。
奥の緑色はうぐいす豆です。青臭さを和らげるために、柚子で香りづけをしています。白は手亡豆、上に散らしているのはフリーズドライの桜です。
そして手前が、ほうじ茶の香ばしさを加えた大納言です。基本的に、茶道では茶を原料に使ったお菓子は出さないのですが、ギャラリーで提供するのでいつもとは違う試みをしてみました」(長沼さん)
鹿の子を試食させてもらうと、ふっくらと炊きあげられた豆と餡のおいしさが口の中で一体に。それぞれのお菓子がまとう柚子や桜、ほうじ茶の香りがふわっと広がります。
そして召し上がる時にぜひご覧いただきたいのが、その中身。切り分けると餡に包まれた羊羹が姿を現します。
重厚な見た目とは裏腹に持ちあげた時の軽やかさなど、意外な一面ももつ田澤さんの器。それに倣って、お菓子にも思わぬ発見があったらと考えたのだそうです。
さらにご用意するのがこちら、水羊羹と錦玉です。涼しげな寒天菓子には桜の葉と花のエキスが使われていて、清らかな水に漂っているかのよう。
「桜の木の器に合わせた、桜をテーマにしたお菓子です。水分量が高いので味が凝縮して、繊細な桜の香りも味わえますよ」
■和菓子を通して伝えたい、季節の移ろい
今でこそ和菓子づくりに邁進する長沼さんですが、最初からこの道に進もうとは思っていなかったそうです。
「幼いころから近所の人から3代目と呼ばれて、嬉しさもあるけれど反発心もあって。高校卒業後はバスケットボールシューズをつくる仕事に就きたくて、デザインを学びました。
でもものづくりに携わるうちに、自分の中にある和菓子のDNAのようなものに行きついたというか。やっぱり自分は和菓子なのかと思ったときに、おじいちゃんが具合悪くなって。店を手伝いながら、やっぱりここにいよう思ったんです」
「人生を楽しませてくれるものが、和菓子にはいっぱいあるんですよ。和菓子が表現する季節感を、もっとみんなにわかるかたちで伝えていけたらと思っています」
>>《つくり手ファイル》木工家田澤祐介さん×和菓子職人長沼輪多さん:前半
■田澤祐介/木工展
2018年4月6日(金)から 4月15日(日)
11:00-19:00(最終日17:00)
〈田澤祐介さん在廊日〉
4月7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)
※お支払いは現金のみの対応です。
〈お菓子〉
お茶と和菓子(落雁つき)セット 1000円
お持ち帰り和菓子 500円 ~、焼菓子250円~
shed(東急田園都市線、大井町線二子玉川駅から徒歩3分)
※こちらの展示会は終了しました。
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