2025.2.09
なぜ冗談を言うのか
年末年始は昨年にも紹介した地元のお気に入りの古書店『たてよこ書店』に行ってきました。東京と新潟とふたつに暮らしの軸足を置く店主が運営するこの本屋。店主がいないときは場所をシェアしているタコス屋さんや手紙のお店が店番をやってくれるんだそうです(店主から教えてもらいました)。
さて新年が明け、今年は何から読もうか。昨年は他社ではありますがファッションデザイナー山本耀司さんの『服を作る 増補新版 —モードを超えて』からでした。
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この本は、読売新聞の記者である宮智泉さんが聞き手となって山本耀司さんの幼少時代の記憶や服に対するまなざしをあれこれ聞きだされた本なのですが、どんな感情、インスピレーションを受けてデザインに落とし込んでいるのかが、手に取るように分かってしまう不思議な本でした。発してしまった瞬間にかたちづくってしまう言葉は、万能じゃないにしても、やはり説明手段として大切ですね。
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私の今年の一冊目は、たてよこ書店でこの2冊を選びました。一つは最近気になっていた歴史作家の今村翔吾さんの『戦国武将伝 東日本編』。もうひとつは、『日本人には思いつかないイギリス人のユーモア』。
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後者はニヤニヤしながら手にとった本。書棚の中で唯一光ってみえたとは大げさですが、この手のその国の文化に通ずる本は好きな分野です。とは言え、本を開いてみれば、溢れんばかりのジョーク。蛇口から止まらない水のようにジョークを浴び続けます(止めて止めてという感じ)。最初は困惑しながら読み、そのうち身体が馴染んでいきましたが、予期せずジョーク疲れのスタートとなりました。
著者の北村元という方はテレビ局の元アナウンサーで当時BBCの日本語部に出向されイギリスへ。ほかにもいろんな国の支局にいた方のよう。そんな暮らしの中で際立っていたイギリスのユーモアについて興味を持ち、まとめた本です。
本書では、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドと、それぞれの持ち球で賑やかに攻防が繰り広げられます。それはその土地の気質や風土に立ち返るようなもので、そもそも、なぜ冗談を言うのかではなく、イギリス人にとって冗談は癒しであり、言わなければ気が済まないものなのだと理解しました。
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ジョークには余情や哀愁が漂っていると以前から思っていて、この本でより一層感じたわけですが、日本人でいうならば、侘び寂びみたいなもので短歌的な立ち位置なのでしょうか。となると、日常的に短歌を楽しむぐらいの間が必要。その余裕を持ててないなあと、いま思っているところです。
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