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20.01.15
《つくり手ファイル》木と異素材の美しい調和/枯白
枯白の作品は、日常の風景を特別なひとこまに変える力があります。木だけでなく金属や革の加工も自分たちで行うため手間は要するけれど、だからこそ異素材同士の調和は叶うのでしょう。この冬姫路から届いた箱には、美しい道具の数々がつまっていました。
■綿織工場跡地の工房で
兵庫県姫路市。木々や緑に守られるように建つ、こちらの趣深い建物が枯白の拠点です。綿織工場の跡地だというこの場所で、作品は生まれます。
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乾喬彰さん、直実さんが枯白をスタートさせたのは2009年のこと。高校、大学と美術やデザインを学んだ二人は、シンプルに「ものをつくること」が好き。枯白のはじまりは、とても自然な流れだったようです。
「最初は、少しの木工機械と小さな溶接機でハンガーや燭台などをつくっていました。
クラフトフェアや企画展に出展するようになり、つくりたいものが増えて、少しずつ道具も増え工房も広い場所に変わりました。今はスタッフと一緒に大きな家具から小さな道具まで手掛けています」( 喬彰さん)
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■木工も鉄工も自分たちの手によって
枯白の作品の特徴の一つが、素材使い。木だけでなく、金属や革など様々な素材が使われていて、すべて自分たちの手で加工しています。
それは喬彰さん自身が木工業を営む家で育ち、さらに大学で溶接を学んだことから実現したこと。とはいえ、外に頼まずに全工程を制作するのは大変なのではないでしょうか。
「確かに、木工も鉄工も一つの工房で行うところは珍しいと思います。自分たちで完結させるためには、設備や道具、それに時間も必要になってきますし。
でも現場で実物をあてがいながら進行できる点は、大切なことだと思っています」
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「例えば木と鉄は相性がとてもいいのですが、微妙な調整で見え方が大きく変わります。鉄の太さが数ミリ変わるだけで不格好になったり、取って付けたようなデザインになったり。
仕上がりのバランスはとてもデリケートで、そこの感覚的なところは私たちが大切にしている部分でもあります」
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■素材の表情に心躍る瞬間
不思議なことにかたちや素材の種類は同じでも、枯白の作品はどれも違って唯一のもののように見えます。それはまず木を見て、その個性をどう活かすかを考えるものづくりの姿勢によるものかもしれません。
「加工をすることでよさが活きるのか、経年変化した様子を活かした方がいいのか」木と向き合って考えるひとときは、乾さん自身にとって楽しい時間でもあるそうです。
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「材木を仕入れる時、古材・新材にかかわらず一つ一つの木の表情(木目や質感など)に心が踊る感覚があるんです。
その感動を、そのまま作品にしたいと思うことがあります。人為的なものではなく、自然の表情であって欲しいという思いから『そのまま』。だから、木の色あせた表情や皮や節の表情をそのまま使うこともあります」
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■使われることで現れる美しさ
エンベロープのためにつくってもらった作品は、どれも枯白が暮らしの中で欲しいと思ったものをかたちにしたものです。
時間が経つと味わいを増す素材が使われているので、その変化する様子も愉しんでほしいというのが枯白の想い。コーヒーの染みもパンや果物を切ったナイフの跡もまたよし、と考えます。
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深みが増して円熟した味が出る「枯」、そしてものごとがはじまる原点のような新鮮さをもつ「白」。
オイルフィニッシュで仕上げられた木の道具は呼吸をし生き続けるので、味わい深く育ち、そこに新たな美しさを宿します。
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写真提供:枯白(1、2、3、5、6枚目)
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