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20.07.31
《工場見学7》プリント工場/浜松
2003年から2009年頃にかけてリネンバードのウェブサイトに掲載していた「工場見学」を改めてお届けします。浜松のある遠州地方は古くは棉の産地として知られ、小幅織物で栄えました。最盛期の半分以下に縮小した現在では。各社独自性を出しながら連携を強化することにより、お客様のニーズを的確に応えようと努力されています。今回は、リネンバードがリネンの製織でお世話になっている浜松の工場から紹介いただきプリント工場にお邪魔しました。
※この記事は当時のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる点があります。
■ 多種多様の「染め」技術を見学
最初に拝見したのは自動でスクリーンプリントをする機械。実際のプリントを始める前のテストランの最中でした。途中に乾燥させる場所があったりと、機械自体が巨大で、生地は長い距離をベルトにのって動いていきます。
オリジナルの柄をプリントしようとすると、いつもコストとロットが問題になりますが、相当のテストランが必要とのことで、やはり小ロットでは難しいことがよくわかります。
こちらは走行式とよばれるもので、もっとハンドプリントに近いプリント機械です。スクリーンをセットして、染料を流し込んでいます。この機械もスクリーンは動かずに、生地のほうがベルトにのって移動していきます。
天然繊維は斜行していたりして、生地をはってセットするのに特に気をつかうそうです。
ロータリースクリーンプリントは休み中でした。訪れたのは大変な集中豪雨の後で、雨漏りにより、機械を一部とめざるをえないような状況の時期でした。写真の円筒の内側から染料が出て、連続的なプリントが可能で、プリント速度もスクリーンに比べるとかなり速いとのことです。
ただ円筒の大きさは一種類なので、直径にあった柄パターンに限定されます。旅館やホテルのゆかたになる生地を、主にこの機械でプリントしているそうです。
得意なものに特化する染工所が多い中、こちらの染工所では時代の流れを受けていろんな種類の染めを手がけるようになったそうです。
こちらはゆかた用の小幅の生地にハンドプリントする様子です。作業台は生地が固定されるように、やや粘着性があります。
最後に別の場所にある注染(ちゅうせん)の作業場を訪ねました。ここには機械はまったく存在しません、職人さんと道具の世界です。
注染は明治後期に始まった日本独自の染色方法で、小幅のてぬぐい・ゆかたのプリントに利用されてきました。プリントが片面だけの模様であるのに比べ、注染は重ねて折り畳んだ生地にまとめて染料を注ぐため、裏表なく全体が染めぬかれます。
通常旅館のゆかたは、コストの理由から、表面にだけ柄がついたプリントが多いのですが、裏からみても同じように柄が染色されているものは、注染染めで高級品だとのことです。
糊付けの職人さんが5人いて、畳まれた晒しの上に型をセットして糊をのばしています。糊付けの段階からすでに、どんな柄のものなら誰にやらせるとかというのがあるそうで、その割り振りをするのが工場長の仕事だそうです。
糊はデンプン、海草類などの天然成分だそうですが、いままで嗅いだことがないような匂いです。
この糊がついた部分は染まらず、染める部分には糊がありません。
糊をのばした後は、おがくずをまいた床に投げ出され、上に箒でおがくずがかけられるのですが、これは次の作業に移るまで、糊を保護するためのものです。 お相撲の力士の名前のはいったものがたくさんありました。
次の職人さんは、みんな染めの職人さんです。それぞれの職人さんが自分で使う染料も調合するので、ここでも職人さんによって得意なものが決まっています。微妙な藍色を表現するには、経験と熟練が必要だそうです。
染める段階で、色を変えるために、また糊を使ってで土手を作り、染料が混じらないようにします。また同じ一色のようであっても、微妙に色を混ぜ合わせたり、ぼかしなどの自然なグラデーションを表現することができます。
そのため、じょうろは片手で持ったり、両手でいっぺんに注ぎ込んだりと、ここでも熟練の職人技が生きています。
そして最後に、ついた糊を激しく水洗いして落とします。
こういった注染工場もどんどん減っているそうで、こうした職人技の継承が危惧されています。昔ながらの手ぬぐいや、ゆかたにとどまらず、なにか面白い利用方法があるのではないか。製織会社の方との帰りの車でそんな話をしました。
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