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20.07.31
《工場見学12》製織工場/フランス
2003年から2009年頃にかけてリネンバードのウェブサイトに掲載していた「工場見学」を改めてお届けします。今回訪問したのはフランス・リールのリネンウィーバー。リネンバードで扱っているリネン生地を織る会社です。
※この記事は当時のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる点があります。
■ 100年以上歴史あるリネンウィーバー
リネンバードで扱っているアイテムに「2ストライプ」と呼んでいる生地があります。普通は赤のストライプなのですが、リネンバードのために特別な色のラインを注文しています。
パリの北駅からTGVで1時間、ベルギー国境に程近いリールはフランス第4の大都市で周辺の町を含めると、人口100万人を超す規模です。
かつては繊維、製鉄業などの産業都市として栄えましたが、今はフランスIT産業の中心地です。新しい駅の周辺では、旧市街とは対照的に、近代的で大規模なオフィス開発が行われています。
TGVやユーロスターが発着するリール・ヨーロッパ駅から歩いて5分程のところにリール・フランダース駅があります。
リールから海に向かって車で20分程のところに、今回訪問するウィーバーはあります。この一帯はフランスの中でも、ベルギーにまたがるかつてフランダースと呼ばれた地域で、今もフラックスの栽培が盛んです。
「この辺りの家はみんな昔うちの会社の社宅だったんだ」という通りを過ぎると、小さな町のほぼ中心に工場がありました。100年以上前からある工場屋もあって、そうした工場を中心にかつて町ができていたことを彷彿とさせます。
この会社も設立がおよそ130年前の歴史のある織物会社ですが、現在の社長は8年前にこの会社を買いとった後、これまで精力的に事業の転換を図ってきています。
ローテクの繊維産業にあって、集中と特化の必要性から従来の織物技術をテクニカルファイバーの新しい分野に活用しています。現在の主力製品は、ゴムボートに使われる布地、自動車のエアーバッグの中にある結合部分の布地だそうで、軽くて強い生地の特性を生かし「とてもとても特化した分野でこっそりやっているんだよ。」と笑って教えてくれました。
その一方で、コットンとリネンを使った伝統的な織物業も続けています。
こちらでは、リネン100%、リネン/コットンのメティス生地でも、どちらかといえば重量のあるアパレル以外で使われる素材を中心にしています。フランスの一流メゾンH社やL社のバッグの材料にも採用されているそうです。もちろんこれらは各メゾン特注のもので、他の顧客にも販売はしていません。
この生地は、常にストックを持って販売している中でのベストセラー、各々の販売ロットは小さくとも年間で3万m売れるそうです。このラフなリネン100%の布はパン屋さんが買う特別な生地です。
フランスのパン屋さんがどのようにパンをつくっているのか知らず、何度も説明されたのですが、今ひとつよく理解できていないかもしれませんが、要するにバゲットの種をつくってオーブンで焼くまでの間寝かせるところに敷く布だそうです。洗濯はせず、使い捨てで1年に何回か買い換えるとのことです。
「このままの生地でケバとかついたりしないんですか?」って訊いたら、「だからフランスのバゲットは、特別な味がしておいしいんだよ」ってまんざら冗談でもないような顔だったので、それ以上は訊けませんでした。
日本に帰って気になっていたパン籠を取り出してみると、やっぱりこの生地、これはカンパーニャの種を寝かせるためのものだったのかとやっと学びました。
リネンバードの2ストライプです。昔ながらのミミの処理ができるのは、古い織機だからこそ(60歳くらいだそう)、織り上げる速度はもちろんゆっくりです。普通はこんな風にミミは切られて、処理されるのです。
英語ではsalvaged hem (復旧されたミミ)などと呼ばれています。
古い織機の最大の問題は、機械が故障することです。コンピュータも使われていない機械の修理はシンプルですが、替えの部品がないので、部品からつくることも多々あるそうです。年季の入った織機郡、稼動していないものもたくさんあります。
検反の様子はどこも同じです。天然繊維を使った古典的織物工場屋と、テクニカルファイバー工場屋は、完全に遮断されています。
というのも、精密さを要求されるテクニカルファイバーに埃は厳禁だからです。2つの工場屋を行き来するのは社長だけ。
資材置き場はゆったりしています。リネン、メティス、コットン、テクニカルファイバーの糸が整然と並んでいます。リネンの糸は概ねイタリア産のものでした。
リールの街はクリスマスショッピングで賑わっていました。
それをあて込んだ移動遊園地も、観覧車はなんの囲いもないので相当に寒いだろうと思うのですが、まるで寒さを喜んでいるような人びとのすごい歓声が広場にひびき渡っていました。
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